はじめてのブーム『キン肉マン』
子供はブームというのに弱い。ひとたび火がつくや、まさしく熱病のように広まって、もうそれしか考えられなくなる。
最近、といっても少し前のことになるが、目の当たりにして驚いたのが『ポケモン』のブームだった。
『ダイヤモンド&パール』が出てしばらくした頃、自転車に乗りながらDSをやろうとした子供が、親に注意されているところを目撃したのである。危険極まりないが、まあ、自転車にのっている間でさえ遊びたかった気持ちは分からないでもない。一度熱中してしまうとそれくらい周りが見えなくなるものだ。近く『ポケモン』の最新作が発売されるようだが、また再びあの熱病が広まるのだろうか。
80年代に子供だった俺の、一番古い記憶でのブームといえば何か、と考えると、どうも年代の順序がはっきりしなくなるのだが、おそらく『キン肉マン』だったと思う。それはもう、社会現象といってもよかった。
ブームの初めの頃には、まだ『キン肉マン消しゴム』、いわゆる『キン消し』は存在しなかった。では、みな何を集めていたかというと、俺の周りでは、駄菓子屋にあったシールだった。正式名称は分からないが、『ラブシール』と呼ばれる、半透明のプラスチックに様々なキャラの顔が描かれたシールだった。それを下敷きのようなものに、びっしりと貼り付けて集めるというのが地味に流行った。ただ、『ラブシール』はシールとしての出来はチープで、すぐに粘着部分が溶け出してシール全体がベタベタになるので、親などには少々評判の悪いものだった。
『キン消し』を初めて見た時のことはあまり覚えていないが、手に入れたのはガチャガチャによってだった。当時『キン消し』を出していたメーカーが複数あったのかは記憶にないが、俺が入手した『キン消し』は、他の子が持っているものよりも随分と安っぽい作りで、一目見てニセモノだと分かるような残念な代物だった。言うまでも無く、がっかりしたことこの上なかった。それ以来、俺はあまりガチャガチャを信用しなくなった。
その後、どうやって増やしたのか、『キン消し』はどんどんと集まり、よく友達とダブリを交換をしたり、互いに持っていない超人を自慢しあったり、集めた数を比べたりした。ちなみに、俺は他の子が飽きだした『王位争奪編』の頃になっても集めていたから、最終的には随分な数が集まったはずだ。
それにしても、あれだけ大量にあった『キン消し』はいったいどこに消えたのだろう。
「先輩、『キン消し』って消しゴムとしては使えないんですよね」
「誰でも言えるあるあるネタだな。でも俺が持ってたのは、MONOよりも良く消えたけどな」
「ウソだ!」