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『都市伝説』

 



 近頃はタレントの影響で都市伝説はすっかりブームになったが、ちょっと前までは都市伝説という言葉自体、あまり一般的じゃなかったように思う。おそらく、テレビ番組を見ていて「あ、この話って都市伝説だったのか」と気づく人も少なくなかったのではないか。

 80年代の都市伝説は、やや小ぶりなものが多かったように思う。かつては、それこそ『口裂け女』やら『赤マント』といった一世を風靡するようなパンチの利いた都市伝説があったが、80年代あたりからは、ジョークっぽいものや、今で言う疑似科学めいたものが主流になっていったような気がする。

 では、俺がパッと思いつくものは何かというと、ひょっとしたら80年代から広まった話ではないかも知れないが、「コーラを飲むと骨が溶ける」というものだ。

 もちろん今ではこんなことを言う人は皆無だろうが、当時は本当に信じられていて、学校の先生が当たり前のように話していたりした。それにしても、なぜコーラなのか。ファンタやスプライトは大丈夫なのか。そんな疑問も持たないくらい、皆が当然のことだと思っていたのだ。

 

 そういえば、有名な『ダルマ』という話があるが、これも聞いたのは子供の頃だ。一緒に聞いていたまわりの大人たちも知らない様子だったので、おそらく80年代ごろに広まった話なのだろう。ここでは差し障りのある内容なので、どんな話なのかは省くが、知りたかったら自己責任で調べてみるといい。なかなかゾッとするお話だ。

 今では死語となってしまった『国際化社会』という言葉が頻繁にニュースで言われていた頃だったから、海外に対する恐れのようなものが、この話を広めた背景にあるのかも知れない。


 『耳から白い糸』も時代を反映している。俺はこの話を親から聞いたのだが、いわく、

「だから絶対にピアスなんかしちゃ駄目!」

 なのだと。

 そんなこと小学生に言っても仕方ないと思うのだが、まあそれが当時の親たちの正直なところだったのだろう。どんな話なのかは、タイトルと今のピアスという単語で思い当たると思う。耳にあけたピアスの穴から白い糸がでているのに気づき、糸くずだと思って取ろうと引っ張った瞬間、目が見えなくなった、というものだ。つまり白い糸は視神経だった、という。もちろん、この話は完全なガセだ。

 今ではピアスはおしゃれの定番だが、当時はまだ不良のファッションという風潮があった。そうしたマイナスイメージが、この話のベースにあるのだろう。


 親から聞いたと言えば、『死体洗いのアルバイト』。これはいろんな派生話があるようだが、俺の親が言うのはホルマリンのプールに漬ける、というもの。おそらく防腐処理をするためだと思われるが、人の死体をプールに入れ、浮かんでこないように一晩中漬け込むアルバイトがある、というのだ。親は学生時代に実際に誘われたらしいが、あまりにも気味が悪くて断った、と言っていた。一応、都市伝説的にはそんなアルバイトはないと言われているのだが、真偽のほどはどうなのだろう。


 真偽がわからない話は他にもある。『猫ラーメン』がそうだ。美味いと評判のラーメン屋が、出汁に猫を使っていた、という話で、それが明るみに出て営業停止になった、というもの。

 これは、俺の地元でもそういう噂の店があったし、他の地方でもけっこうある話らしい。中国では猫を食べる人もいるので、案外本当の話だったのかもしれない。それにしても、どの話でも『猫ラーメン』は「美味い」という部分が共通していて、それまで繁盛しているのが面白い。こう言ってはアレだが、一度食べてみたい、とも思わないでもない。


 食べ物の都市伝説でもっと知られているのは『ミミズバーガー』だろう。某有名チェーン店が、ハンバーガーのなかの中の肉、つまりハンバーグ部分の材料に、コストダウンのためミミズを使っている、という話。これが流行ったとき、実際に食べていたハンバーガーからそれらしいものが出てきた、と言い張る友達がいた。気持ち悪くなって捨てた、と言っていたが、まあ確実に見間違いだろう。一説には、食用ミミズをハンバーガーに使うと非常に高コストになる、というから、わざわざ某チェーン店がそんなことをするはずがないからだ。


 都市伝説で面白いのは、知っている話を実際に目の当たりにした時だ。

 『当たり屋ファックス』という少しマイナーな都市伝説がある。これは、当たり屋、つまりわざと交通事故を起こし、示談金を取ろうとする人のことだが、その当たり屋の大規模な集団が近くに来ていますから気をつけて下さい、という警告をするファックスだ。この事実をたくさんの人に伝えてください、という文言が入っていたりするから、いわゆるチェーンメールに近い。ご丁寧に、車の種類やナンバーがズラリと列挙されているのだ。もちろんそれはすべて出鱈目なのだが、たまにこれを真に受ける人がいる。俺は、今までにこのファックスを店内に掲示している店を二軒見たことがある。その時は、これが噂の! と思わず感動してしまった。


 『当たり屋ファックス』などはまだ可愛い方で、問題はより手軽に、際限なく広まってしまう『チェーンメール』だろう。

 先の東日本大震災でも何種類かのチェーンメールが飛び交ったことがニュースで取り上げられていた。実に不愉快極まりない話だが、都市伝説をある程度知っていると、そういう怪情報を見抜くのに役立つこともある。というのも、チェーンメールは大体パターンが似通っているからだ。

 俺の家族も東日本大震災につけこんだチェーンメールを受け取っていたが、俺は一目見てチェーンメールだとわかった。もちろん、都市伝説など知らずとも、それがイタズラのメールだと気づいた人も大勢いただろう。だが、だまされた人が大勢いたのもまた事実だ。

 詳細は言えないが、俺の家族にそのチェーンメールを送った人は、驚くべき数の人に一斉送信していた。おそらく少なく見積もっても500人には送っていたはずだ。その後すぐ、間違いだったという旨のお詫びメールが同数の人へと飛んだので、それ以上の拡散は防げた、と信じたい。

 先のチェーンメールに騙され、メールを他の人に送ってしまった人は、ぜひとも都市伝説を学んでもらい、デマを見抜く目を持ってもらいたいと思う。




「先輩、いまはツイッターなんかもありますから、デマなんかはどんどん広がってしまいますよね」


「都市伝説は時代を反映するから、そのうちツイッターの都市伝説なんかも現れるかも知れないな」


「どうでしょう、もうすでにあるのかも知れませんよ」


「まあ、そうだろうな」

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