『クリスマスとテレビ』
早いもので、今年も残りわずかになった。もうじきクリスマスだ。
クリスマスと言えば、子供が一年で最も楽しみにするイベントだろう。食卓を彩るご馳走にケーキ、そしてプレゼント。
幼少の頃のクリスマスプレゼントが何だったのか、俺は今でもはっきりと覚えている。一番古い記憶は、仮面ライダーの変身ベルト。次に戦隊ヒーローの合体ロボだった。それからゲームウオッチと続いていく。
子供の頃は良かった、としみじみ思うのは、なんと言ってもこのクリスマスの頃だ。
そして、クリスマスに楽しみにしていたのが、もう一つある。
それは、テレビ番組だ。
今でもそうだが、クリスマス時期になると各局が特番を組む。どのチャンネルもクリスマススペシャルだらけで、いやでもクリスマスを実感するものだ。
当時の俺が絶対に外せなかったのが、イブの夜の恒例となっていたドリフのクリスマス特番だった。
80年代の頃はドリフ全盛期で、『全員集合』はもちろん、『大爆笑』も大変な人気だった。普段から俺は欠かさずに観て、毎回腹を抱えて大笑いしていた。そこへクリスマスの特番があるのだから観ないはずがない。
ドリフのクリスマス特番はいつもと違って人形劇をやるのだが、俺はこれが特に好きだった。NHK教育で人形劇をやっているが、あれをドリフでやる、というようなイメージだ。メンバーそっくりの人形が登場し、クリスマスに即した劇が展開される。もちろん、声はメンバーがあてているから、ドリフのコントとしても、人形劇としても一味も二味も違う、まさにスペシャルに相応しい内容だった。
ドリフのコントや人形劇で笑い、チキンやらケーキやらを食べ、夜更けに届くであろうプレゼントへの期待で胸を膨らませる。
ケーキ、プレゼント、そしてドリフ。これこそが俺のクリスマスだった。
ドリフは子供のものだった。大人向けの笑いが売り物だった『オレたちひょうきん族』でさえ、タケちゃんマンの登場によって、やがて子供のものになった。
今、人気のゴールデン番組のうち、子供のものだと言えるものがいくつあるだろう。子供番組がゴールデンから姿を消すなか、クリスマスの楽しみをテレビに求める子供がいるのだろうか。
もちろん、それがあるべき姿だとか、そうでなくてはいけないとか、そんな事が言いたいわけではない。今の子供だって、充分にクリスマスは楽しいはずだ。夕方のアニメはスペシャルがあるし、何よりもプレゼントがクリスマスのすべてだという子だっているだろう。
ただ、クリスマスイブくらいは、多くの子供が喜ぶような、クリスマスはこれが楽しみなんだと、ずっと後になってからでも言えるような、そんな番組がゴールデンにあってもいいように思う。
少なくとも、俺の時と比べて今の子供はクリスマスの楽しみが一つ減っている……かも知れないのだから。
「先輩はいくつまでサンタクロースを信じてました?」
「難しい質問だな」
「どうして?」
「実は、サンタクロースの存在は、はじめて聞いたときから疑っていたんだ。でも信じてはいたいだろ。だから信じるようにしてた。この場合、いくつまで信じていたと言えばいい?」
「……生まれてこのかた、一度も信じてなかったってことじゃないですか」
「夢のない子供だよな」
「まったくです」