『YMO』
あまりテレビを観なくはなったが、それでも気に入った番組だけは録画をして視聴している。最近の録画機器は便利になったもので、すぐにCMカットできるのがとても便利だ。おかげで、話題のCMなどを見逃すことが増えたのだが、それでも印象的なCMというのは、記憶に残るものだ。
そんななか、最近、俺の心が大きく動かされたCMがある。それは『ポッキー』のCMだ。
CMネタは風化しやすいことは承知で話すのだが、2010年9月末のポッキーのテレビCMには、かの『YMO』が出演しており、名曲『ライディーン』が流れ、『ポッキー』カラーである赤が画面いっぱいに広がる印象的なものとなっている。
繰り返される「ポッキーを」の言葉は、もしかしたら『テクノポリス』の「TOKIO」をもじっているのか、だとすると、元々は『ライディーン』ではなく『テクノポリス』を流す予定だったのだろうか、など、想像をかきたてられるCMだ。
『YMO』すなわち『イエロー・マジック・オーケストラ』は、いわずと知れた日本のテクノミュージックのパイオニアで、80年代にテクノブームを巻き起こした。
80年代当時、俺はそんな事は知らなかったが、後から考えると、いつの間にかテクノが身体に染み付いていたのでは、と思わされる。
例えば、NHK教育の『みんなのうた』の名曲『コンピューターおばあちゃん』は、編曲など坂本龍一が手がけている(ただし作詞、作曲は別)。
『欽ドン!』が好きだった俺は、当然『ハイスクールララバイ』も口ずさんでいた。作曲、編曲は細野晴臣である。
恐らく『YMO』自身だけでなく、YMOから影響を受けたミュージシャンもテクノを取り入れていただろうから、知らないうちに俺はテクノに慣れ親しんでいたのだろう。
90年代になって『電気グルーヴ』のある曲を聴いたとき、俺のなかにあったテクノの土壌が爆発した。誇張表現などではなく、まさしく衝撃が走り、身体中を駆け巡った。かつて音楽を聴いて、ここまでの衝撃を受けたことなどなかった。
それからテクノを聴き漁り、そして時代をさかのぼって『YMO』にいきついた。そこには、完成されたテクノサウンドと、懐かしい80年代の空気が同居していた。
ところで、最近『けいおん』というアニメに『YMO』のネタが散りばめられていると聞いたのだが、一体どういうことなのか知っている人はいないだろうか。
「先輩、マニアック過ぎてついていけませんけど……」
「『ライディーン』くらい知ってるだろう。ほかにも『ファイアー・クラッカー』とか、聞いた事ある曲は多いと思うが」
「『ライディーン』は運動会の曲でしょ?」
「ああ、うん、まあそういう学校もあるな。掃除のときの曲だったという人もいるらしい。ちなみに俺の学校では掃除の音楽は『ふしぎな島のフローネ』だった」
「それも『YMO』ですか?」
「そんなわけないだろう」