私と先輩
寂れた商店街の端っこに、これまたくたびれた外観の、古いゲームセンターがある。
店内は薄暗く、いくつものゲーム筺体のディスプレイが、ぼんやりと光っている。そして、古いゲームセンター特有の、タバコのにおいとトイレの芳香剤のにおいが混ざったような、なんとも言えない空気が充満していた。
客が来ることは滅多になく、それぞれのゲームは絶えずデモを流し続けている。誰にもプレイしてもらえないゲーム内容を延々と流し続ける筺体の姿は、なんとも言えず寂しいものだ。
そんな筺体の墓場と言っていい店内の奥に、先輩はいつもいる。
「せっかくだから、ゲームすればいいのに」
アルバイト店員である私は、いつも先輩にそう言うのだが、
「この雰囲気がいいんだよ。どこよりも落ち着く」
と、決まって答える。先輩はなかなかに変わり者だ。
「まあ、見てのとおり暇ですから、私も話し相手がいてくれた方がいいですけどね」
「そうだろう」
先輩は得意げに笑った。そうしてから、それぞれのゲームの画面を懐かしそうに眺め、昔の話をするのだ。昔とは、決まって先輩の子供時代、つまり80年代のことだった。
ただ、話はゲームのことばかりではない。とりとめもなく、思いついたままに先輩は話をするのだ。
今日も先輩は、懐かしそうに80年代の話を始める。
「俺の子供の頃にな……」