狩りの後
10分後。
お兄様がリビングに戻ってきた。
シャツは血まみれだったけれど、その表情は晴れやかだった。
まるで、いい運動をしてきた後のように。
「ただいま、世璃。 ……少し、汚してしまったね」
「おかえりなさい、お兄様。 すごい。全部ひとりでやっつけちゃったの?」
「ああ。意外と簡単だったよ。 身体が軽いんだ。それに、悲鳴を聞くと力が湧いてくる」
お兄様は、自分の手をうっとりと見つめた。
その爪の間には、侵入者の肉片が挟まっている。
初めての狩り。初めての殺戮。
お兄様はそれに酔いしれている。
「外にある車はどうする? また増えちゃったけど」
あたしが聞くと、お兄様は肩をすくめた。
「置いておこう。 あれは『魔除け』だ。 ここがどういう場所か、無言で警告してくれるだろうから」
お兄様は、ソファに座り、あたしを引き寄せた。
血と、鉄と、獣の臭い。
今のあたしにとって、一番安心する匂いだ。
「ご飯にするかい? 若いのが4匹も手に入ったから、当分は食料に困らないよ」
「うん。一緒に食べよう、お兄様」
あたしたちは、月明かりの下で微笑み合った。
外の世界の人間たちが、あたしたちを「化け物」と呼んで恐れる理由が、今夜また一つ増えた。
放置された車の列。
それは、この城の城壁の一部なのだ。




