好きな子からの年賀状がこなくなった
ひさしぶりに参加! 第7回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品です。キーワード「年賀状」。1000文字の短編なのですぐ読めます!
好きな子からの年賀状がこなくなった。
10年前、僕は恋をした。
同じクラスの子で、元気でかわいい子だった。
小学2年生同じクラスの時、彼女に聞かれた。
「あのね、ねんがじょうをおくりたいから……じゅうしょをおしえて!」
その時はなんだかわからないけどふわふわした気持ちで家に帰り、母さんに書いてもらった漢字で書かれた住所を何度も書き直して、翌日その子に一番出来のいいものを渡したこと、そして、その時のとびっきりの笑顔を覚えている。
『あけましておめでとうございます。ことしもよろしくおねがいします!』
かわいい手書きの字と干支とは関係ない猫らしき絵が書かれた年賀状が送られてきた。
年賀状とはおくり合うものである、ということをその時はじめてちゃんと認識したぼくは、あわてて年賀状を母さんと一緒に買いに行った。
「年賀状ありがとう! だけどね……わたしが書いたのいのししなの……」
年明けの学校で眉間に小さなしわをつくって教えてくれた。
その時あわてて弁明したぼくを見て吹き出しわらっている彼女を見たその日から、彼女はぼくの好きな子になった。
それから、
『あけましておめでとう! この春も同じクラスだといいね』
『今年で卒業だね。中学生になってもよろしく。同じクラスだとうれしいなあ』
『受験勉強、どう? 同じ志望校だしよかったら一緒に追い込みしない? してください。手料理付けます』
毎年彼女からの年賀状が来て僕はどんどん彼女が好きになった。
そして、高校3年生の時、彼女が言った。
「私、頑張って東京の大学受ける!」
十二月ギリギリでの志望校変更。これが大きな転機。
この年明けの年賀状が、彼女からの、僕の好きな子からの最後の年賀状となった。
春、彼女は大学に合格し上京。僕は就職。
その次の年から彼女からの年賀状はこなくなる。
だって、
「ねえ、お義父さん達への年賀状どうしたらいいかな?」
「んん~、年始には帰るしいいんじゃない?」
「でも……毎年送ってたのに今年からあなたがいないから送らないって現金じゃない?」
そう言う彼女が眉間に小さな皺を作っていることに気付き、僕は左手を当ててゆっくりと撫でる。
薬指に嵌めた指輪に思わず笑みが零れる。
「じゃあ、一緒に書こうか。今年からは」
「……うん! 一緒に書こ!」
二人で一緒に上京し暮らし始めた住所を一緒に書く。
好きな人からの年賀状がこなくなった。
代わりに、好きな人と年賀状を書くようになる。
これからは、ずっと。
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