目覚める怪物【冬の童話祭2026】
それは、ある寒い冬の夜のこと。
小さいちぃちゃんは、白い息を吐きながら、お父さんにたずねました。
「ねぇ、パパっ。あの大きなお星さまは、いつ見ても明るさが違うみたいに見えるね。なんでかな?」
物知りなパパは、にっこり笑って答えました。
「あの星は、変光星っていう時間の経過で明るさを変える特別な星なんだ。遠すぎて地球からじゃ分からないけれども、星の大きさが、小さくなったり大きくなったりするたびに色が変わるんだよ。」
「えっ?大きさが変わっちゃうの?」
ちぃちゃんは、ビックリしてしまいました。
だって、お星さまの大きさが変わってしまったら、そこに住んでいる人たちはどうやって暮らしていくんだろう?って心配になってしまったのです。
ちぃちゃんは、もう一度そのお星さまを見つめると、白い息をはぁっと吐きました。
【 目覚める怪物 / ニクマン・フェアー 著 】
きらきら星のかいぶつ君は、きらきらきらきら光っています。
かおも、きらきら。
あたまも、きらきら。
からだも、一等、きらきらしています。
そうして、彼が、目覚めると、きらきら星は、一等、きらきらと輝きます。
ある夜のこと。
窓から、お月さまが、そろそろかなっと、かいぶつ君のお家の窓をのぞきました。
けれども、かいぶつ君は、まだ、ぐぅぐぅとねむったまま。
もう起きなくてはいけない時間なのに、ちっとも起きる気配がありません。
このままでは、夜空の中で、一等きらきらしているきらきら星が、暗いままになってしまいます。
まあるい体に、ちっちゃな羽、チクタク音とともにやって来たのは、赤い色をした目覚まし君。
彼は、首をひとつかしげると、ぴょんとベッドの上に飛び乗りました。
チクタク、チクタク、パチパチっ!じりりりりりりりりぃ~ん!!!
「かいぶつ君、起きて~!お月さまも、待ってるよっ!」
でも、かいぶつ君は、動きません。
「もごもご・・・むにゃむにゃ・・・」
おふとんの中で おなかの星をぎゅっと抱きしめて、すやすや、すやすやっ。
静かに寝息を立てています。
「こまったなぁ・・・」
頭についた鐘を打ち鳴らして音を鳴らしても、起きてくれないかいぶつ君。
目覚まし君は、かれのの耳元へ移動すると、お口にふえをくわえて、ピピピピピピィィィ!
さらに、大きな音を立てました。
「もう朝だよー!周りのお星さまも、目を覚ましたよー!」
でも、かいぶつ君は、片手で「ぽん」と目覚まし時計君を枕もとに押しやりました。
「むにゃむにゃ・・・あと3億年・・・」
ぜんぜんダメっ。
まったく起きる気配がありません。
その時、まくら君が、ぽよんと声をあげました。
「これは、わたしの出番かな?」
まくら君は、かいぶつ君の頭の下からぐいっとぬけだして、くるんと宙返り。
「ほらほら、まくらがないと寝られないでしょ?」
でも、かいぶつ君は、自分のしっぽをふわりと頭の下に入れました。
「しっぽまくら最高っ~むにゃむにゃ・・・」
まくら君の作戦は大失敗。
かいぶつ君はふわっとおおきなあくびをして、くるりと体をまるめてしまいました。
「どうしたら、起きてくれるの・・・?」
目覚まし君もまくら君も、悲しそうに床にぺたりと座りこんでいます。
すると今度は、おふとん君がふわっと立ち上がりました。
「もう、仕方ないわねっ!」
ふわっふわの体をのばして、かいぶつ君の体からシュバッと抜けだします。
「おふとん、撤収ぅぅっ! さあ、これで寒くなって、起きるはず!」
でも、かいぶつ君は、まるまって自分の大きな体をぐるりと包みこみました。
「うぅぅぅ・・・自家発熱モード発動~ぬくぬく・・・ぐぅぐぅ・・・」
困ったことに、かいぶつ君は、完全に快眠モードに突入してしまったのです。
目覚まし君とまくら君とおふとん君は、顔を見合わせて言いました。
「こうなったら・・・3人でいっしょにいくしかない!!」
せーのっ!!
「かいぶつ君~~~!!!」
目覚まし君は、ベッドに飛び乗ると、じりりりりりぃと頭の鐘を大きく打ち鳴らします。
まくら君は、ポヨンポヨンと飛び跳ねて、かいぶつ君の頭をポカリポカリっ!
おふとん君は、バッサバサと、冷たい風をかいぶつ君の体へと吹き付け、かれを目覚めさせようと頑張ります。
「お~き~て~~~!!!」
その時でした。
ごろんっ!!!
突然、寝返りをうったのは、ぐぅぐぅと眠るかいぶつ君。
目覚まし君、まくら君、おふとん君はベッドの端にゴロゴロゴロリン!
ぽすっ!!
そうして、3人ともベッドの下へ、まとめて落っこちてしまいました。
すやすやすや
ベッドの上では、かいぶつ君が、幸せそうな寝息をたてながら、夢の中。
「・・・むにゃ・・・むにゃむにゃ、星の戦士たちよ!さぁ冒険に出かけよう!」
そして、ベッドの下からは、悲しそうな声・・・
「もう、だめかも・・・」
「ちょっと泣いていい?」
一方、かいぶつ君は、くるりとまるまるやいなや、しっぽでおふとん君を掴むと体にぐるりと巻きなおし、さらに快適モードへ突入。
「あったかいなぁ♪ぐぅぐぅぐぅ。」
目覚まし君とまくら君は、顔を見合わせて言いました。
「もう、お手上げだぁ・・・」
その時です。
ぐぅぐぅと寝息をたてるかいぶつ君の鼻が、ぴくぴくっと動きました。
くんくんっ!くんくんくんっ!
お鼻の先が、ひくひくと大きく動きます。
なんだか と~ってもいいにおい。
ふわぁ〜んと、香ばしくて、あったか~い、におい。
「おいしいにおいだっ!」
叫び声と一緒に、かいぶつ君のおなかが「ぐぅ」と音をたてて、ぱちっ!とおめめが開きました。
「かいぶつ君っ、起きなさい!肉まんがあったまったわよ~。」
そうです。
匂いのもとは、キッチンから漂ってくる、かいぶつ君のお母さんがスーパーの肉まんフェアで買ってきた557の肉まんでした。
ふとんをぽんっとはねのけ、かいぶつ君は、むくり!と起きあがります。
まだ、寝ぐせの残る頭で、ぱたぱたとキッチンへ。
おはようっ、かいぶつ君っ!
かいぶつ君が起きたことで、きらきら星の大きさは、むくむくと見る間に大きくなり、きらきらきらきら、一等、輝き始めます。
このきらきらとした光が、何億年もの時をかけて、目覚まし君もまくら君もおふとん君も・・・そして、かいぶつ君も忘れたころに私たちの地球へと届くのでした。
* * *
それは、寒い冬の窓の下。
白い息をはぁっと吐きながら、ちぃちゃんは、じぃぃっとお星さまを見つめると、くしゅんと小さなくしゃみをし、お父さんは、そぉっと窓を閉めました。




