ep.8 その道の先に
あのおじいさんをまた見かけたのは、息子をスクールバスに乗せ、自宅へ戻る途中だった。
公園の脇に設置されたゴミ箱を漁る姿は、もう見慣れた光景だったけれど、今日は若い男たちに囲まれ、ゴミ箱ごと蹴り飛ばされているのを目にしてしまった。
咄嗟に駆け寄ったものの、彼に無言で払いのけられた手は、未だ宙ぶらりんのままだ。
心配そうに見つめるジャスミンの視線にも気づかず、老人は古びた自宅へと消えていった。
ジャスミンは自宅の窓から、老人が歩いていった方角をぼんやりと眺めた。彼女の家は、あの公園が見下ろせる丘の上に建っている。
ダイニングテーブルを拭きながら、先ほどの光景が頭から離れない。
薄汚れた姿、頑なに他者を拒む態度。
世間は彼を「ホームレス」と呼び、軽蔑の目を向けるけれど、彼女には、彼が単なる浮浪者には見えなかった。
あの、何かを探すような、静かな眼差し。
彼女はどうしても彼のことが気になり、無意識のうちにエプロンを外し、玄関のドアを開けた。
老人が消えていった道を、ジャスミンはゆっくりと辿る。
…まさか、こんな近くに住んでいたとは。
彼の家は、彼女が想像していたよりもずっと、彼女の住む通りからは目立たない路地に入った場所にあった。
錆びた郵便受け、草の生い茂る小さな庭。
そこへ差し掛かった時、彼女は息を呑んだ。