ep.34 燃え上がる命
ジャスミンはハッと息をのんだ。
アークがログアウトしたということは、現実世界のブライアンに何か異変が起きたということだ。
「バイタルが低下したため、強制ログアウトします」
ブライアンのアバターが入っていた筐体からシステム音声が流れた。
直後、目の前のブライアンの筐体の蓋が「シュッ」という音を立てて開いた。
ブライアンは、激しく咳き込み、その口元から、鮮血がボタボタと床に落ちていた。
筐体にも血が飛び散り、彼の顔は苦痛に歪んでいる。
続いてジャスミンの筐体も蓋が開く。
彼女は慌てて、筐体から飛び出した。
冷たい床を素足で駆け抜け、ブライアンの筐体へと駆け寄る。
彼の顔は土気色で、呼吸は浅く、苦しそうに喉を鳴らしていた。
ジャスミンは震える手で彼の手を掴み、その頬に触れる。
「ブライアンさん、しっかりして! ブライアンさん!」
ジャスミンの声が、静まり返った部屋に響き渡った。
彼の意識は朦朧としており、ジャスミンの呼びかけにも、弱々しく目を開けるのがやっとだった。
「イヤ!まだ逝かないで!一緒にゲームしよう!ね?」
ジャスミンの懇願に、ブライアンはかすかに目を開けた。
彼の視線は、虚空を彷徨い、その瞳にゲームへの、そして生きることへの未練が宿っているのが見て取れた。
彼の唇が震え、ログアウトさせられたことへの悔しさを吐露する。
「……なんで……どうして……」
か細い声だった。
彼は、命の灯が消えゆく中で、それでもゲームへの執着を見せた。
「そうだよね、ブライアンさん! 大丈夫だよ!まだまだ、もっとたくさん冒険しようね!」
ジャスミンは大粒の涙を流しながら、力強く頷いた。
ブライアンの目が、一瞬だけ安堵に揺れたように見えた。
ジャスミンは、彼の顔に触れたまま、その場から動くことができなかった。
彼の体は最期に命を燃やし尽くすかのように熱く、汗で湿っていた。




