ep.2 ごみ漁り
その時、通りの向こうから、若い男性数人の笑い声が聞こえてきた。
「うわっ、あれホームレスじゃん」
「マジかよ、こんなとこにもいんのかよ」
彼らはブライアンの方を指差し、嘲笑う。
一人の若者が、ゴミ箱に足をかけ、思いきり蹴飛ばした。
中身が散乱し、一部がブライアンの足元に飛び散る。
ブライアンは何も言わず、無表情のまま、ただ蹴られたゴミ箱から目を離さずにいた。
彼らの存在は、ブライアンにとって透明な壁の向こう側にあるかのようだ。
その光景を、息子のマイケルをスクールバスへ送り届けていたシングルマザーのジャスミンが目撃した。
彼女はマイケルの手を握りしめ、眉をひそめる。
バスが発車し、マイケルが手を振って見えなくなるのを確認すると、ジャスミンは躊躇いがちにブライアンの方へ足を進めた。
「あの、おじいさん、大丈夫ですか? お怪我は……」
ブライアンは、ジャスミンの声に反応することなく、散らばったゴミの中から何かを探すように視線を走らせる。
彼女の差し伸べられた手に気づくと、彼は無言で、しかしはっきりと、その手を振り払った。
ジャスミンは、振り払われた手をゆっくりと下ろし、何も言えず立ち去るブライアンの背中を、心配そうに見つめることしかできなかった。
ブライアンは振り返ることなく、古びた自宅の玄関へと消えていく。