ep.17 ブライアンの危機
あくる日、ジャスミンはスーパーで買い物を済ませ、自宅へ戻る道を歩いていた。
少し寄り道し、ブライアンの家の前を通ると、玄関のドアが半開きになっているのが目に入った。
中からかすかに聞こえるうめき声に、ジャスミンの胸に嫌な予感がよぎった。
彼女は恐る恐る玄関をくぐり、薄暗い部屋へと足を踏み入れた。
散らかった室内、その部屋の真ん中に置かれたヴェリディアン・レゾナンスの筐体。
その中で、ブライアンが激しく咳き込み、口元を押さえている。
「ブライアンさん!」
ジャスミンが慌てて駆け寄ると、彼の白い手から、鮮血が床に滴り落ちた。
ブライアンは苦しそうにジャスミンを見上げたが、言葉を発することもできない。
顔色は土気色で、呼吸も荒い。
「だ、大丈夫ですか!? 救急車を…!」
ジャスミンはポケットからスマートフォンを取り出し、震える手で救急車を呼んだ。
ブライアンを横向きにし、彼がこれ以上苦しまないように、と背中をさする。
数分後、けたたましいサイレンの音が近づいてきて、救急隊員が慌ただしく家に入ってきた。
ブライアンはすぐにストレッチャーに乗せられ、救急車へと運ばれていく。
ジャスミンも彼に付き添い、病院へと向かった。
病院に着くと、ジャスミンは医師や看護師に状況を説明し、彼を託した。
医師は深刻な表情でブライアンを診察室へと運び、ジャスミンは待合室で不安な時間を過ごした。
冷たいベンチに座りながら、彼女はゲームの中の穏やかなブライアンの姿と、今目の当たりにした現実の彼の衰弱した姿とのギャップに、ただただ胸を締め付けられていたが、息子のこともあるので後ろ髪を引かれながら帰路についた。