領主館へ
あまり乗り心地の良くない馬車に揺られること2、30分。豪邸というよりお城のようなお屋敷に着いた。
途中の道もこの屋敷も見たことはない。
これはもしや異世界転生!?いや転移だな! この格好のせいでお嬢様と思われているようだし、私のお嬢様ぶりを発揮するチャンス!ロリータパワーを見せてやる!とわけのわからない決意をした。
「ミコト様こちらはレーゲン領主様のお屋敷です。私の主人はこちらで働いているので、毎日送り迎えに来ています。ちょっと声かけてきますんで、お待ちくださいね」
「はい、お手数かけます」
恐縮しながらレインコートを脱ぎ、身繕いをしつつ馬車で待つ。
新しいワンピースに着替えておいてよかったーと思いながら荷物を確認。紙袋には着替えた服と買ったリュックやアクセサリーがちゃんと入っていた。
髪や化粧直しをしていると
「ミコト様、どうぞこちらへ領主様がお会いになります」
と声をかけられた。
領主様って村長さんとか?市長?それとももっと上かなぁ?
なんだかよくわからないけど、とりあえず行くしかないよね。
屋敷の中はまるでブライダルホールのようなゴテゴテクラシカル。フランスの宮殿の様。
「きゃー!ステキ!チータさん、ばえよばえ!!」
思わず興奮すると
「バエ?虫がいましたか?」
「違うわよ!映え!後で説明するよぉ」
SNSなんてないところなのね……あとで写メしよう!
……できるのかな?と思いスマホを手に取るともう電源が入らなかった。
がーーーん。まぁ、そんなものよね……
きゃーきゃー言いながら豪邸内をお宅拝見ばりに歩いて行くと応接間に案内された。
座って良いのか、どこに立つべきなのかおたおたしてると領主様がお供を連れて入って来た。
「領主様、こちらがカイフミコト様です。大臣のご令嬢のようです」
チータに紹介されたので最敬礼し、自己紹介。
「大変でしたね。何があったか覚えていますか?」
茶色い髪のイケおじ風の領主様が優しく聞いてきました。
「たぶん雷にあたって倒れてチータさんの声で気が付きました。でも、ここは私のいたところとは違うようで……なんと言えば良いか……」
しどろもどろになり、お嬢様ぶりも何もありません。
「しばらくここにいて落ち着いたら思い出すでしょう。ベルミナ、客間に通して今日は休んでもらいなさい」
ベルミナと呼ばれる女性に案内されて客間へ。
客間は10畳くらいの部屋にベッドとソファ、お茶が飲めるようなテーブルと椅子が置いてありました。
「きゃー、かわいいお部屋!天蓋付きベッドだー!」
とはしゃいだら、ベルミナが、ジトーッと私を見て、
「あまり迷惑をかけないようにしてください。今は人手が足りないのに急なお客様だなんて……チータはなんでも拾ってくるんだから。室内着を用意して来ます、静かにお待ちくださいね!」と嫌味をいわれた。
その後ベルミナが戻ってきたので、着替える前にお風呂に入りたいと伝えると、湯浴みならできるが人手がないので今日は無理だと言われてしまった。
せめて顔だけでも洗いたいと訴えると、桶とお湯の入ったポットを持って来てくれた。
汚れたお湯はトイレに流すようにとのこと。
部屋の中でトイレを探すとクローゼットのような扉があり、開けてみると穴の空いた椅子があった。穴を覗くと小川が見えた。どうやら汚物は川へ直接落ちる様になってるようだ。
……ぼっとんだけどある意味水洗トイレ?いや水流トイレだな。
とりあえず借りた寝巻きに着替えてベットに飛び込むと、疲れていた様で直ぐに寝てしまい、気が付いたら朝となっていた。