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ど正論ヒーロー セイロンガー  作者: 月極典


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94/113

正論(94)ニュースショー


 民放テレビ局、夕方のニュースショーの司会者が、スタジオからリポーターに呼びかける。

「高柳さん、先程、自宅マンションに帰宅したセイロンガー氏ですが、報道陣が自宅に招かれるという驚きの展開になりましたね?」


 カメラが中継に切り替わり、現場の女性リポーター高柳が答える。周りでは各局のリポーターがそれぞれのテレビカメラに向かってリポートしている姿が見える。

『はい、こちら現場の高柳です。セイロンガー氏ですけれども、先程、赤い高級スポーツカーで帰宅し、報道陣を避けることなく毅然とした態度で『ここは迷惑だから』と、我々報道陣を自宅へ招きました。現在、セイロンガー氏が戻るのを待っているところになります』


「そこは、マンションのロビーになりますか? また、実際のセイロンガー氏の印象はいかがだったでしょうか?」


『はい、こちらはセイロンガー氏がオーナーとして所有するマンションのロビーになっています。こちら11階建なんですが、ロビーは大変広々としていて、ちょっとした談話スペースもあり、掃除も行き届いていて、駅近だし、お家賃どのくらいかしら……なんて思ってしまいました』

 真面目な顔から照れ笑いを隠すようにリポートする高柳。


「はぁ、良い感じの高級マンションということですね?」

 司会者はフォローするように高柳のリポートを上手く言い換えた。


『はい、この辺りだとそうですねぇ、ワンルームで12〜15万くらいには、なるんじゃないかと考えています』


 駄目だこりゃ、という感じで司会者、

「あの、家賃よりですね、セイロンガー氏の印象をお願いします」


『失礼しました。セイロンガー氏は噂の赤いヒーロースーツに真っ白なTシャツを細身のジーンズにインした格好で、颯爽と現れました。第一印象は、スタイリッシュでカッコいい、です!』

 軌道修正しようとしたが、結局個人的な感想に着地してしまう高柳。


 久々の現場からの生中継、失敗は出来ないと必死に現場をスタジオからコントロールしようとする司会者。

「え〜っと……、事件の映像と比較していかがでしょう? 違い等、気付かれた点はありますか?」


 焦る司会者の様子を感じ取った高柳、凄惨な現場もこなしてきた自負がある。

(ちゃんとやれ、私!)

『私も一般の方が撮影された事件の映像をいくつも見ましたが、実際のセイロンガー氏はカタコトではなく流暢な日本語を話され、声も落ち着いた渋い低音で、とても素敵でした。また、マスクもですね、映像のように口元だけ素顔になっておらず、顔全体がマスクで覆われていて、そこも良かったです』


 もう、笑って誤魔化すしかないと判断した司会者。

「あはは……高柳さん的に、かなりの好印象だったようですね?」


『すみません、かなり個人的な印象を述べてしまいましたが、マンションオーナーとして居住者のプライバシーは断固守るという姿勢も感じられ……あっ、きゃっ、セイロンガー氏がいらっしゃいました。今からいよいよ、セイロンガー氏のご自宅へ訪問したいと思います!』


「はい、ありがとうございます。また準備出来ましたら中継を繋ぎます。一旦CMです」


 ⸻CM中⸻

 司会者がサブのディレクターに確認する。

「なぁ、今の大丈夫? 完全にスターお宅訪問みたいになってたけど。きゃっ、だって高柳さん。代わりの男性リポーター行かせた方が良くない?」


 イヤフォン越しにディレクター。

『いやいや、めっちゃ面白かったから全然OKっす。普段真面目な高柳さんがあんな目がハートになるんすねぇ。まぁ、相手はどうせ何の容疑もないクセ強ヒーローなんで、あっ、他局はCMぶち抜いて中継してるわ、ミスった!』


(相手はVVEIが潰しにかかる男だぞ、コイツみたいに、あんまり甘く見てると痛い目見ると思うがなぁ……)

 ベテラン記者出身の司会者は内心思ったが、黙っていた。

 

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