正論⑼ 初登校
おはようございます!真由美です。
いよいよ今日からセイロンさんと登校です。
ちょっとドキドキしています……。
「行ってきまーす!」
あっセイロンさん、お父さんと庭の松の木の前で話してる。
今日は黒いスーツに白いシャツ、ワインレッドのネクタイかぁ……シークレットサービスみたいで格好良いな。
「おはようございます、セイロンさん」
「おはよう、真由美さん」
あっ、名前で呼んでくれるんだ……。
「では、登校しようか。壽翁さん、失礼します」
「うむ、気をつけてな」
セイロンさんは私の少し前を静かに歩調を合わせて歩いています。
「おい、そこのタコ。電柱に隠れても顔から生えた足が見えているぞ?」
「……」
私達は無視するタコの怪人さんの横を歩いて通り過ぎました。
すると、シュルシュル!という音が背後からしました。
セイロンさんは身を挺して私を守ってくれましたが、タコさんの顔から生えた吸盤付きの足に拘束されてしまいました……。
「さて、ちょっと道草を食ったが、登校を続けようか」
「え、それは……?」
「大丈夫だ、少しヌルつきはするが、歩ければ一緒だ」
セイロンさんは足に拘束されながら、というか怪人さんを引き摺りながら、歩調を変えずに歩いて行きます。
まるで、そういうトレーニングをしているかの様に。
「待て待て待て!」
「あの、タコの怪人さんが話しかけてます」
「そいつはさっき私を無視したからな、答える義理はない」
あ、怪人さんの靴が脱げた……。
素足で引き摺られて痛そう……。
「あの、怪人さん、足外したら楽になりますよ?」
「あぁ、そうか」
怪人さんは足を外しました。これで離れられるかな?
あっ、今度はセイロンさんが足を掴んでる!
「いでで、いでで」
あ、上手いこと靴を履いてる片足の裏で地面を滑り始めた……やっぱり履いてない方の片足痛いんだな。
と言うか、だんだん顔から足がもげてるなぁ……
結局、タコの怪人さんは全ての足がもげて、セイロンさんの引き摺り地獄から解放されました。
道端に倒れ込んだ後、ボロボロの怪人さんはふらつきながら去って行きました。