正論(77)真由美の50m走
「はい! 8秒55!」
「はぁ、はぁ、や、やったーー!」
真由美です!
トゥエルブお姉さんにフォームを直してもらって、ついに出ました50m走、8秒台です!
「よく頑張りましたね、真由美お嬢様。最初測ったタイムは10秒50ですから、2秒近く短縮出来ました」
トゥエルブお姉さんも笑顔で喜んでる。頑張った甲斐がありました。
「ありがとうございます!自分で言うのも恥ずかしいですけど……風になれたような気がします、えへへ」
「うふふ、まぁ……風は言い過ぎかなと思いますけど、8秒55は高2女子の全国平均を上回りましたよ。ちなみに、10秒50は小学生女子、2年生と3年生の平均の間くらいです」
「しょ、小学生!? ちょっとぉ、お姉さん、それ言わないでくださいぃ」
私、そんなに遅かったんだ。小2って……。ま、まぁでも、なんとか結果は出せたかなぁ。これでセイロンさんにも報告出来るゾ!
「あははは、面白い。さぁ、ちょっと水分補給がてらちょっと休憩しましょうか」
休憩。まだやるんだ……、まだ……。
トレーニングアリーナはスタンバイエリアがあって、自販機で飲み物も買えて、休憩出来るようになっています。
そういえば、お姉さんの高校生の頃、どんな感じだったのかなぁ。きっと素敵だったんだろうな。
「あの、お姉さんは高校の頃、50m走どれくらいだったんですか?」
「私の高2の頃は7秒ジャストくらいでしたね。まぁ学校の測定ですから正確か分かりませんけど、陸上部の顧問がスカウトに来ましたよ。……バイトが忙しくて断りましたけど、あはは」
「はやーー! えっ、バイトって何やってたんですか?」
バイト!私も高校生だからバイトしたいけど、お母さんが危ないから駄目って言うんです。自分は居酒屋でバイトしてたのに……。
「ライブハウスですねぇ。バンドやってたので……」
トゥエルブお姉さん、頭をかいて、ちょっと照れながら教えてくれました。
「すごーーい! バンドかぁ、憧れるなぁ……。やっぱりボーカルとかですか?」
こんな綺麗なお姉さんがバンドとか、カッコ良すぎる! きっとお洒落な感じなんだろうな。
「ギターとボーカルです。『GUM⭐︎SHALA』っていうハードロックバンドでした」
「がむしゃら……。怖そうだけど、なんかカッコいいです! 聞いてみたいなぁ、お姉さんのボーカル」
「えーー、なんか恥ずかしいなぁ。一応、動画配信サイトに『てんつば』って代表曲のライブ映像が落ちてますけど」
「てんつば、変わったタイトルですね?」
「『天に向かって唾を吐け』の略ですね……インディーズではそこそこ売れたんですけどね」
すご……。どんなガールズバンドだったんだろう。
「後で観てみよっと!」
「キャラが違い過ぎて嫌いにならないで下さいね?」
そんな話をしていると……。
アリーナの入り口がウィーーンと開いて、数人の人達が話しながら入ってきました。
赤いヒーロースーツが見えます。
「あっ、セイロンさんだ!」




