表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ど正論ヒーロー セイロンガー  作者: 月極典


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/113

正論(74)赤い鈍感男


 遂に明らかになった、赤い稲妻スーツの秘密。ベルトのボックスに内蔵されたDIPスイッチにより、バージョンアップが可能だというのだ。


 しかし、セイロンガーには先に聞かねばならないことがあった。大曲博士の隣に己がマンションの居住者、江口麻里がいる理由である。

 

「ところで……江口さん。貴女はなぜここにいるのですか? 見たところ休日に友達と高尾山に来た山ガールのような格好をされてますが」


 ここで江口麻里の山ガールファッションコーディネートを見てみよう。

上から、アウトドアブランドのカーキ色のハット、トップスは白地のボーダーTシャツにベージュの薄手のベスト、ボトムスはカーキ色のショートパンツに同系色のタイツ、靴はベージュのトレッキングシューズ。急ごしらえで衣装ケースから引っ張り出したにしては中々のコーディネートであり、麻里がある時期ちゃんと山ガールをしていたことを窺わせる。そして、道中かなりの汗をかいた麻里は到着後、パウダールームでしっかりと化粧直しをしているのである。


「えっ、あの実際ここまで登山で来たのでこの格好なんですけど……私、大曲博士に誘われてIHAに転職することにしました!」


「おぉ、そうですか! いやぁ、それは良かった……居住者の勤め先まで口を出せませんが、ヴィラン企業で働いていることを少し心配していたのです。転職おめでとうございます」

 セイロンガーは素直に喜びを表し、麻里の手を取り握手をした。


 麻里は初めて触れたその手の温もりに顔を真っ赤にして言った。

「お、お世話になります。よろしく……お願いします!」

 まるで男女の交際スタートのようだが……。


「あぁ、しかし私はIHAに所属していないので、あまりお世話は出来ませんが……」

 恋の鈍感男のDIPスイッチがオンとなっているセイロンガーのリアクションであった。


「ぬふふふ、まぁ赤い稲妻よ、ヒーローであるからには我々は仲間だ。所属がどうのは関係あるまい?江口くんは本社の研究部門で働くことになる。色々お世話してくれたまえよ」

 麻里の態度でそういうことかと合点した大曲博士がフォローする。


「無論だ、大家と言えば親も同然という」

 わざと言ってるのかと勘ぐりたくなる赤い鈍感男の発言。


「親……」

 白目になりながら、思わず声に出る麻里。


「そうだ、水沢さんは? 彼女も当然誘ったのだろう?」

 セイロンガー、もうやめてあげてほしい。今、その名を出さなくても良いだろう。


 その問いに答える大曲博士。

「あぁ、声はかけたのだが……どうやら迷っているらしい。管理人さんに相談して決めたいって言っていたから、近々話があるのではないかな?」


「は!?」

(やられた! この機会を餌に食事に誘う気だ……。ぐぬぅ、さすがは雪菜先輩、よくぞこのホワイトマリリンを謀った!)

 麻里は死せる信玄に騙された信長のように悔しがった。


「そうか……彼女も転職したがっていたからな。相談されたら話を聞いてみよう」


 ここは黙って見過ごすわけにいかない麻里。

「あの管理人さん、多分背中を押せばすぐ転職決めると思うので、朝会った時に話せば十分かと……」


「しかし、転職に関する話ですから、立ち話では失礼でしょう……」


 麻里は絶望して思う。

(この誠実さ! 万事休す!)


 しかし、そこは居住者とプライベートで食事する考えに至らないセイロンガーである。

「そうだこの際、五百旗頭邸で話しよう。社長に直接会って決めてくれたら間違いはない」


(セーーフッ!五百旗頭邸なら間違いは起こるまいて、策士マリリンしてやったり……)

 悪い顔になっていることに気づかず、モノローグが完全に武士のようになっている麻里。


「あのぅ、そろそろDIPスイッチの話、進めても良いかな? 遅くなると帰れなくなる」

 1ミリたりとも話が進まず、帰り道の心配をし始めた大曲博士であった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ