正論⑺ 依頼
真由美です。
今、2階のサンルームで紅茶を飲んでいます。
玄関からここに来るまで更に45分かかりました……。
「さて、セイロン君。失礼を承知で拙宅にお呼びしたのは実は頼みたい事が……」
「はい、お受け出来るかわかりませんがお聞きします」
「聞いて断ってくれても構わないよ」
お父さん、セイロンさんにあれをお願いするつもりだ。受けてくれるかな……。
「実はこの真由美の専属ヒーローをお願い出来ないかと」
「専属……」
「この1週間で2回も怪人に攫われそうになり、この街もかなり物騒になってきたのはセイロン君も感じている事だろう」
「確かに、こちらに来るまでの道すがらも、タコの怪人とシャコの怪人に狙われていました。イカといい、寿司ネタに偏っているのが少々気掛かりですが」
「ふーむ、またしても海鮮とは。……ところで、失礼ながらセイロン君はヒーローとは別に生業はお持ちですかな?」
「はい、現在居住しているマンションを一棟所持してますので、その家賃収入で暮らしています。また、別に投資用物件を少々。ヒーローはあくまで事の成り行きで……。悪事が目に入った時にやっているに過ぎません」
あの立派なマンション、セイロンさんの持ち物なんだ……凄いなぁ。
「その若さでマンション経営とは、恐れ入りました」
「いえ、こう見えて……と言ってもこれでは歳もわからないでしょうが、既に三十路を越えています」
「いやいや、先程来の豊富な知識や話振り、20代では無理というもの。それで、如何ですかな?」
「娘さんが高校を卒業するまで、という事であれば」
「そうですか!良かったなぁ、真由美。これで私も安心出来るぞ」
「お父さんが安心出来るなら私も……嬉しいよ」
「それで、毎月の報酬なんだが、毎日の拘束時間を鑑みて、この辺でいかがかな?」
お父さんは私に見せない様にスマホを手で隠してセイロンさんに提示しました。
「多額な報酬に見合う働きが出来る様、努めたいと思います」
「さぁさ、話がまとまったようねー、お夕飯の用意が出来ましたよ。みんなでダイニングにいらしてね!」
お母さんが呼びに来たので、ダイニングに向かいましたが、途中で壺の話が始まったのでお母さんに注意してもらいました……。