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ど正論ヒーロー セイロンガー  作者: 月極典


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66/113

正論(66)トゥエルブ


 ブォーーーーン、オ、オーーーーン……。


 セイロンガーの赤いスーパーカーは甲高くも空気を震わせるエンジン音を響かせて高速を西へ向かう。

たまに他のスポーツカーが気付いて車間を詰めてくるが、セイロンガーはそれを相手する事なく、車線変更し、相手をやり過ごす。相手のスポーツカーは名残惜しそうにこちらを見やり、通り過ぎていく。中には助手席から動画撮影している者もいる。

 

 トゥエルブが無線を入れる。

『セイロンガーさん、全く相手にしないんですね。スピード出したら必死に追いかけようと緊張していたんですけど』


「あぁ、この車で高速走ると他のスポーツカーに良く追いかけられますが、相手にしないようにしています。お互い危険ですし、他の車の迷惑になりますから」

 

 スピード出さないのに何でこんな何千万もするだろうモンスタースポーツを買ったんだろう?と一瞬思ったトゥエルブだが、

『さすがです。この先のサービスエリアで休憩にしましょうか』


「了解です、トゥエルブさん」


 サービスエリアで駐車し、外の空気を吸う。初夏の日差しが強い。


「私、何か飲み物買ってきます。何がよろしいですか?」


「いえ、私の用事でトゥエルブさんに来てもらってますから、私が買ってきます。真由美さんのこと宜しく頼みます」

 そう言ってそれぞれのリクエストを聞き、セイロンガーは飲み物を買いに行った。


 トゥエルブは辺りを警戒した後、真由美に話しかける。

「真由美お嬢様、お手洗いは大丈夫ですか?」


「はい、大丈夫です!」


「ドライブは楽しめてますか? 私が付いてきてちょっと申し訳ないです」


「いえ、とっても楽しいです。セイロンさんと色んな話が出来て……」


「そうですか……無口そうに見えて結構話す人なんですね」


「はい! セイロンさんはすっごいお話上手なんです。知識も凄いし、話題も私に合わせてくれるし……」

 トゥエルブは真由美が心底楽しそうで微笑ましく思った。そして、このような外出を認めてくれるご両親で本当に良かった、とも思うのである。


「そうだ、彼が戻ってきたら記念に写真を撮ってあげますよ」


「でも……私、体操着だからなぁ……」

 体操着に胸には五百旗頭と書いた名札。年頃の女子高生にはあまりに可哀想な格好である。


「このサービスエリア大きいから何か着る物売っているかも。後で見てみましょう」


「いいんですか?」


「いいの、いいの。せっかく憧れの人と写真撮るのに体操着じゃねぇ……」

 トゥエルブはあえてかしこまらず、フランクに答えた。


「えっ、もうトゥエルブお姉さん、からかわないで下さい!」


 セイロンガーが戻ってきた。

「ずいぶん楽しそうに話していましたね。トゥエルブさんお水どうぞ。水分補給してください」


「ありがとうございます。ちょっと私たち中でショッピングしてきますので少し待ってていただけますか?」

 トゥエルブはそう言ってヒーローマスクを取る。現れたのは日本人とは思えない碧眼と銀髪を持つ美しい素顔だった。


「うわぁ、トゥエルブお姉さん、とても綺麗……」

 真由美はこんなに美しい人がいつもヒーローマスクで顔を隠しているなんて勿体無いと素直に思った。しかも……ヒーロースーツはピッタリとしていて、かなりのナイスバディだ。途端に体操着の自分が耐えられないほど恥ずかしくなってきた真由美。


「お姉さん、早く行きましょう!」

 真由美はトゥエルブの手を引っ張って服を買いに急いだ。


 セイロンガーは車に乗り込む。

『マスター、トゥエルブさんを登録しました。綺麗な人ですね』


「あぁ、そうだな。あの感じはロシア系かもしれんな」


『最近、マスターは綺麗な女性に囲まれて嬉しい悲鳴ですねーー。よっ色男!』


「からかうのはよせ、エミリー。同じくらい変な怪人にも囲まれている身にもなれ……」

 

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