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ど正論ヒーロー セイロンガー  作者: 月極典


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63/114

正論(63)煽り運転


 真由美です!


 今日は、“はなきん”ですよ。頑張っていきましょう!

楽しいセイロンさんとの登校ドライブなんですが……。

今日もやっぱり怪人さんの邪魔が入りそうなんです。


 凄いスピードで追い抜いた黒いスポーツカーが無理やり割り込んできました。

その車はスピードを落として、車間距離が縮まると急ブレーキ。またスピードを上げ、スピードを下げて急ブレーキという運転を繰り返しています。


 これって、今問題になっている煽り運転なのかな?


『マスター、イライラしてきました。よろしければ適切な脇道を選択し対象車両を回避することが出来ます。オートドライブに切り替えますか?』

 エミリー、冷静に提案しているけれど、AIってイライラするんだ……。


「まぁ、落ち着けエミリー。そのうち正体を現すだろう」

 そう、セイロンさんに任せておけば安心なんです。

私のヒーロー、セイロンさん。なんちゃって……。


「真由美さん、少し寄り道する」

 セイロンさんはそう言って左に見えるコンビニに入って駐車しました。前を行く黒いスポーツカーは急ブレーキをかけ、凄いスピードでバックし同じコンビニに駐車してきます。危ない運転だなぁ、歩行者が居なくて良かった。


 スポーツカーから運転手が降りてきました。

『マスター、チャンスです。後続車はありません、公道に戻りますか?』


「いや、コンビニに駐車した以上、何かしら購入する必要がある。ここは客用の駐車場だからな」


『学習不足、失礼しました』

 エミリー、反省してる……。


 相手の運転手、やっぱり怪人さんです。なぜなら顔が……何だろう、コントローラー?みたいな物になっています。そして、そろそろ夏だというのにレーシングスーツを着ています。物凄く暑そう……。


「セイロンさん、あれってコントローラーですか?」


「あのH型の頭はレーシングカーのハンドルだな」


 運転手がセイロンさん側の窓をコンコンしました。セイロンさんが窓を開けます。


「なんだ?怪人」


「降りろ!」


「何か用か?ハンドル顔」


「俺は国際A級ドライバー怪人ル・マンだ!」


「別に自己紹介しろとは言ってないが、そのル・マンが俺に何の用だ?登校中で急いでいるんだ手短に頼む」


「俺の車を追い抜いただろう!」


「そうなのか?エミリー」


『いいえ、マスター。この車両が大通りに出た際、当該車両は右手前の路肩に停車していたのを確認済みです。全周囲カメラで撮影した映像を再生しますか?』

 エミリー有能だね、すごい!


「だ、そうだが?俺もその車が右に停車していたのを覚えている。逆に追い抜いたのはお前の方だろう?」


「うるさい! 何でもいいから車を降りろ!」

 怪人さんってセイロンさんにやり込められると大体うるさいって言うんだよなぁ。


「降りない。ところで、お前さっき国際A級ライセンスとか言っていたな、本当か? ちょっとライセンス見せてみろ」

 ハンドルさんがレーシングスーツのポケットからライセンスカードを出しました。


「ほら見ろ、国際A級だろうが」


「その西暦のところを隠している指、どけろ」


「……」

 セイロンさんは手を伸ばして、力ずくで指を退けました。そこには2015と記載されています。


「期限切れじゃないか。それならちゃんと過去国際A級ライセンスだった怪人と名乗れ。それとル・マンと言ったか? 出場経験はあるのか?」


「無い。目指していたんだ!」


「そうか、では新しい名前を授けよう。過去国際A級ライセンスだった怪人ル・マン(憧れ)だ」


「長いんだよ!」


「それとな、その顔写真」

 2015年のライセンスカードにはハンドル顔の写真が貼ってありますが……セイロンさんが指で剥がすと下から真面目そうな素顔の写真が出てきました。


「10年前のその男が今のお前を見たら何て言うかな。なにがあったか知らんが、ル・マンを目指していた程の男が今やハンドル顔で煽り運転か?」


「……うるせえ。運転気をつけろ……」


「お前もな」


 ハンドルさんは車に戻り、走り去りました。


「では真由美さん、何か飲むか?」


「じ、じゃあストロベリーフラッペで!」

 えへへ、ちょっと高いやつお願いしちゃった……。

 

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