正論(59)セット!ハット!ハット!
五百旗頭道場。
今、正に『ビーハイブ奥義電撃タッチダウンフィーチャーリングセイロンガー』が発動しようとしていた。
ここで、10数秒のハドル(必殺プレー前の打合せ)中に何が決められたか、解説しよう。
スカイホーネットがプレーコールを行う際。
1.「セット、ハット、ハット」(ハット2回目)でハニービーが電撃ボールをスナップする事
2.用意したプレーは2つ。
①スナップ後にボールを後ろのセイロンガーに渡して、彼が直接ヨダレにぶつけるパワープレー。
②セイロンガーに渡す振りをして、スカイホーネットがボールを隠し持ち、セイロンガーに釣られたヨダレにダイブし、直撃させるドロートゥダイブ。
③何も言わなければ①、キルとコールしたら②
3.チョップは右から、ボウルは左から(箸と茶碗を持つ手から)進む。
4.イマジンは真っ直ぐ、スネイクは大きく回り込む
以上、これだけの決まり事を僅か10数秒で指示したスカイホーネットの頭脳もさる事ながら、それを聞き返す事なく理解したハニービーとセイロンガーの対応力も流石と言わざるを得ない。
ハニービー、スカイホーネット、セイロンガーがそれぞれのポジションにつく。
スカイホーネットはボールを受け取るべく中腰で構えるハニービーのお尻後方に両手を置きつつ彼女のお尻をペシッと叩いた。
「いやんっ」
作者はこのくだりを気に入ったのでもう一度書いた。
「レディ〜……セット!ハット!……」
スカイホーネットはわざと2回目のハットを溜めた。
「なんだ、なんだ?」
ヨダレはよく分からないが、目の前で中腰で構えるハニービーを攻撃すべく一歩踏み出した。
ピピーーッ!
笛が鳴った。
いつの間にか笛を口にしたセイロンガー、
「VVEI、ヨダレ選手、オフサイド!」
「もう!トカゲちゃん、ダメじゃない。おばさんがボールをスナップするまで動いちゃいけないの!知らないの?」
ハニービーが知ってて当たり前の様に注意した。
「お、おで、そうゆうの知らねぇがら……」
「馬鹿野郎、ヨダレ!そんなアメフトごっこに付き合ってんじゃねぇ!構わず攻撃しやがれ!」
暴れ太鼓、まだ立ち上がれないが、痛みは落ち着き、ヨダレを叱咤した。
それを見たスカイホーネット、すぐさまプレーコールをかけた。
「ハリーハリー!キル!キル!キル!チョップスネイク!チョップスネイク!」
「なんて?なんて?」
意味が分からない言葉に混乱するヨダレ。
3人が再び位置につく。
【図解_今の位置こんな感じ】
◯ ヨダレ
◇ 暴れ太鼓 (金的)
☆電撃ボール
▲ ハニービー (C)
● スカイホーネット (QB)
●セイロンガー (RB)
「レディ、セット!ハット、ハット!」
電撃ボールがスナップされた!ハニービーはスナップと同時にヨダレの視界を塞ぐ様に両手でプッシュする。
スカイホーネットはボールを受け取りつつ、後ろに下がり、セイロンガーに右側から電撃ボールを受け渡す……フリをした!ボールを抱えているかの様に見せかけつつ、大きく右に回り込むセイロンガー!
そこには倒れる暴れ太鼓がいた。暴れ太鼓はしめたとばかりにセイロンガーの足を払った。わざと派手に転ぶセイロンガー。
「暴れ〜!ナイスだ!」
ヨダレはハニービーを力ずくで跳ね除け、暴れ太鼓の方を見た。そこにはボールを持たないセイロンガーが転がっていた。
「電撃タッチ……」
スカイホーネットが電撃ボールを両手に持ちながら飛翔し、回転しながらヨダレの頭頂部に信管を直撃させた。
「ダウン!」
ビリビリビリビリビリビリッ!
「ガァァァァァッ!」
避ける間も無く電撃タッチダウンの直撃を食らったヨダレは感電、気を失いその場に崩れ落ちた。
「ヨダレーー!」
叫ぶ暴れ太鼓にハニービーが無言で歩み寄る。
「やめろ……下半身に力が入らねぇんだ、やめてくれ」
暴れ太鼓が懇願する。
「蜂の様に……蹴る!ホ〜ゥワタァッ!」
本日2回目の金的が決まり、暴れ太鼓は声も上げずに泡を吹いて気絶した。
そこに居る男全員が直視出来ずに顔を背けていた。




