正論(56)コモド怪人ヨダレの力
「さぁ、まずはワンダウンよ!次っ!」
ハニービーはゴリラ怪人暴れ太鼓を必殺の金的蹴りで悶絶させた後、コモド怪人ヨダレに向き直って言った。
「あっあっあっあっあっ」
悶絶する暴れ太鼓の横で、ヨダレは暴れとハニービーを交互に見た。
開いた口が塞がらず、ウィーン、シュボボボッと話してないのに涎が吸引される。
「さぁ、トカゲちゃん。来なさい、やるわよ」
ハニービーが構える。
「おで……かえる。暴れを博士のどごろに運ばないといげねぇし……」
ウィーン(略)
「ちょっとちょっと、トカゲちゃん。そりゃないわよ、おばさんが相手してあげるから、おいで?ほら」
ハニービーこと真佐江は優しく促した。
「真佐江ちゃん、言い方……」
壽翁は少し引いた。
その時、ハニービーがトカゲの腕を掴んだ。
「や、やめで……くでーー!」
ハニービーに掴まれた腕を思い切り振り払うヨダレ。その力の強さにそこにいる全員が目を見張った。
手を振り払われたハニービーが体勢を崩して転がり、何とか受け身を取った。
「あわわ、ずまねぇ、あんた怖ぇがらつい……」
ウィー(略)
それを見たセイロンガーが前に進み出る。
「真佐江さん、私が出ます。黒服共、怪我をしたくなければ下がって正座で待っていろ」
言われた黒服は、小走りに隅にはけ正座した。余程戦いたくないと見える。
「えっ、おでは……セイロンのアニキとはただがいだぐねぇ……」
ヨダレはVVEIでの邂逅以来、セイロンガーに懐いてしまっている。フェアなアドバイスをくれる厳しくも優しいお兄さん位に思っているのだ。
「壽翁さん、すいません。お手数をお掛けしますが、先程のテーマ曲、お願いします」
スカイホーネットが無駄に素早く移動し、Wラジカセのカセットテープを巻き戻し、再生ボタンを押す。
道場に『スカイ・ハイ』が流れる。
(セイロン君、このテーマ曲がいたく気に入ったようだね。……善き哉)
曲が流れる中、セイロンガーが語り出す。
「トカゲよ、お前の生業は何だ?」
「な、なり……なんて?」
ヨダレは『なりわい』という言葉を知らなかった。
「仕事だ。何で飯を食っているか聞いている」
「か、怪人」
ヨダレは何かのテストが始まったと思い、少し緊張し、涎の分泌が増加した。
(略)
「では、何故逃げる」
「こ、怖ぇがら……」
「では聞くが、お前は給料制か?」
「わ、わがらねぇ……気が付いたら銀行に金があるがら、それを2万ぐらいおろじで……」
「もういい……金を貰っているなら戦え!それがお前の仕事だ!」
セイロンガーはいつもの流れが通じないので、面倒になって省略した。
「わ、わがっだ……おで、やるよ、ただがう……」
「良し。黒服、ヨダレの活動限界は?」
「活動限界?」
「涎タンクの残量だ」
「あ、あと2割くらいです!」
「念の為、替えのタンクをバンから持って来い」
「わ、わかりました!」
黒服戦闘員の1人が道場から飛び出して行くが……。
ドドッ、ドコッ、ドコッ、ドコッ!
飛び出して行った黒服はシャドウズによって即座に掃除されてしまった。
「やんぬるかな……か」
セイロンガーは壽翁の口癖が移っていた。
ヨダレを見ると、屈んで力を込めている。
「アニキィ……いだぐでも……なぐなよぉ!おぉぉぉ……」
気合いと共に、ヨダレの目が赤くなり、牙が伸び、爪もニョキニョキと伸び始めた!
「おおぉぉぉ……がぁぁぁあーー!」
ウィーン、ウィーン、ウィーン、シュコー、シュコー
黒服が涎タンクをチェックする。
「活動限界です!タンクが一杯になりました!危険です!」
このままでは、この場所が大惨事となる。セイロンガーはヨダレに叫ぶ。
「待て、トカゲ!道場が……汚れる!」




