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ど正論ヒーロー セイロンガー  作者: 月極典


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55/113

正論(55)セイロンさんのぬいぐるみ


 お久しぶりです、真由美です!

今ですね、お部屋で勉強中なんですけど……どうもお父さんとお母さんの様子が変だったので落ち着かないんです。

 

 リビングでお父さんに電話があった後、お母さんに小声で何やらモゴモゴ話していたんです。微かにセイロン君って言っていたのを聞き逃しませんでした、私。

 

 お母さんは部屋に鍵をかけて勉強してなさいって言ってたけど、きっとまたセイロンさんと道場で何とか組み手をしているに違いありません。


 さっきから道場が騒がしいし、さっき賑やかな音楽も聴こえてきました。もしかしたら、大人だけでカラオケ大会しているのかもしれません。


 そうだ!こっそり見に行ってみよう……。あっ、そういえば、この前作ったこのセイロンさんのぬいぐるみを見せてみようかな?少し恥ずかしいけど……。


 道場は縁側を通って、扉を開けた通路で繋がっています。私が扉開けて通路に出ると……黒い人影がうずくまっていました。

 家の警備をしてくれているシャドウさんの1人です。


「真由美お嬢様、どちらへ?」

 シャドウさんの女性メンバーの人だ。顔は見た事無いけれど、優しい人です。


「えっと……道場へ、セイロンさん来ているなら挨拶したいなって」


「いけません、今、ヴィランの一味が襲撃中です」


「えっ!ヴィランの人が?じゃあ、カラオケはしてないのですか?」


「カラオケ……みたいな音が聞こえたかもしれませんが、あれはご両親のテーマ曲です」


「両親のテーマ曲……」

 両親にテーマ曲があるなんてウチくらいじゃないのかな……。


「危険ですから、お部屋に戻りましょう。私が付いていきますから」


「はい……すいませんでした」

 ヴィランの人たちだったのか、そうだよね、セイロンさん、一回帰ったのにわざわざカラオケしに来るわけないのに……。


「真由美お嬢様、その、手に持っているぬいぐるみ、セイロンガーさんですか?」


「あっ、これは……そう、です。セイロンさんに見せようと思って」


「良く出来てますね、可愛いですよ」


「あ、ありがとうございます……」


「では」


 はぁ、部屋に戻されちゃった……。でも、ぬいぐるみ、可愛いって褒められて嬉しいな。


 ◇◇◇


 一方その頃道場では、ビーハイブの決めポーズが続いていた。セイロンガーが、頃合いをみて曲を止める。

流れる静寂。


 暴れ太鼓がヨダレに、

「なんか、あれダセェな?ヨダレ」

 

 ヨダレは正直に、

「おでは……なんだかカッコいいようなきがする」

 ウィーン、シュボボボ


 ハニービーがポーズを解き、暴れ太鼓に無造作に近寄る。足取りに多少の怒りを含んでいる。

「はい、じゃあね、ゴリちゃん?足開こうか」


 暴れ太鼓は理解出来ず、

「あ?なんでだよ」

(そりゃそうだ)セイロンガーは思った。


 それでもハニービーはしつこく要求する。

「いいから、いいから、ちょい足開いてみて」


 暴れ太鼓は魅入られたように、いや、馬鹿だからか、言われるがまま足を開いた。

「こうか?」


 次の瞬間、

「ほわたっ!」

 鋭く短い掛け声と共に、ハニービー必殺の金的蹴りが決まった。


 敵味方問わず、その場に居る全員が顔をしかめた。女性にはわからない。デッドボールを痛がらない事を良しとするメジャーリーガーでさえ、そこにボールが掠っただけで蹲るのだ。それをヒーロースーツの力を込めて蹴られたのだから堪らない。


「あっあっあっあっ……」

 声にならない呻き声を上げる暴れ太鼓。


「さぁ、まずはワンダウンよ!次っ!」

 

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