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ど正論ヒーロー セイロンガー  作者: 月極典


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54/114

正論(54)ビーハイブ!


 五百旗頭邸道場正面玄関。

襲撃班一味は一列に整列し、入館した。


 丁寧に黒いブーツを脱ぎ揃えて上がる黒服達。


「失礼します!」

 それぞれが大きな声で挨拶し、一礼して道場に入る。門で受けた背中パチーンがトラウマになっているようだ。

 

 道場の1番奥に設置された数本の綱登り用の太いロープ。それを片手で苦もなく登るスカイホーネットの姿があった。吹き抜けとなっている2階の天井まで登り切り、そこから前方に回転しながら飛び、どーん!と着地した。


「あぁ、無理だ……こんなの無理だぁあ!」

人間離れした跳躍を見た黒服戦闘員の1人が逃げ出した。逃げ場所を探し、別の出口、母屋に繋がる扉を見つけた彼は転びそうになりながら出て行く。


 通路を走る音が聞こえたが……。

ドッ!ドドッ!ドカッ!

 鈍い打撃音が聞こえた後、静かになった。

母屋に逃げ込まれたら一大事とセイロンガーが通路を見に行くと、そこには誰の姿も無かった。

暗闇から低い声が聞こえる。

「セイロンさん、掃除は完了しています。ご安心を……」

 

「お疲れ様です……」

 怪人搬出担当が1人減ってしまった。逃げなければ手心を加えてやったものを、愚かな奴だ。


「壽翁さん、ごめんねぇ!セイロンさんにシャドウズのみんなの事バラしちゃった……」

 真佐江が手を合わせて謝る。


「バラしてしまったのかい?折角セイロン君がいつ気付くかと楽しみに思っていたんだが……」

 壽翁はシャドウズに課題を出していた、それは出入りするセイロンガーに気取られずに五百旗頭邸を警備する事だった。


「いえ、多分余程のことがない限り、彼らの存在には気付かなかったと思います」

 セイロンガーは正直に言った。


「ふむ、中々やるだろう?我が社の若手も」


(若手だと?あの気配の消し方、とてもルーキーには思えないが……)

 引退したスカイホーネットの実力といい、若手の実力といい、では第一線のヒーローはどこまでの強者だと言うのか……。


「おい!ふざけるんじゃねぇ!俺たちがいるのにのんびり雑談しやがって!なめてるのか?」

 完全に無視され、憤る暴れ太鼓。これでも東東京では武闘派で鳴らしている自負がある。


「あぁ、ナメてるな」

 ゆっくりと歩きながら、挑発するスカイホーネット。


「なんだとぉ?」


「真佐江ちゃん、久しぶりアレやるか?」


「良いわね!ちょっとセイロンさん、コレお願いしていい?ここ押したら曲が流れるから」

 ハニービーは道場の隅に置いているラジカセの再生ボタンを指差した。年代物の赤いダブルラジカセだ。


「……曲?」

 いきなり指示され戸惑いながらも、2人が何をしたいのか瞬時に悟ったのは流石セイロンガーと言える。


 ハニービーがスカイホーネットの隣に立った。


スカイホーネット「蜂の巣をつついたようなという言葉があるのを知っているか?」


 ハニービーがセイロンガーに再生ボタンを押す様に手で合図する。

戸惑いながらラジカセの再生ボタンを押すと……プロレス往年の有名なマスクマンの登場曲『スカイ・ハイ』が流れた。

(カッコいい……)

セイロンガーの年代ではあまり馴染みが無いが、曲自体がまさに登場曲と言う感じで素晴らしい。


スカイホーネット「蜂の巣をつついたようなと言う言葉を知っているか?」

 スカイホーネットは何食わぬ様子で同じ台詞をやり直した。


「お、おでは!は、初めてぎいだ!」

 ヨダレの素直な返事が丁度良い合いの手になった。


スカイホーネット「そうか……では、教えてやろう」


ハニービー「蜂のように舞い!」

スカイホーネット「蜂のように刺す!」

2人は頭上でパンッと手を叩き、

ユニゾン「2人揃って!ビーーー、ハイブ!」

決めポーズをする2人。

 

(ビーハイブ、蜂の巣……まんまだが、カッコいい)

セイロンガーは最初の再生タイミングをとちった事を多少悔やみながら思った。

 

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