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ど正論ヒーロー セイロンガー  作者: 月極典


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53/113

正論(53)襲撃と言う名の入門


 五百旗頭邸の門が開き、そこには既にハニービーの姿となっている真佐江がいた。


「さぁさ、皆さんターゲットのスカイホーネットは道場でウォーミングアップして待ってますよ。ほら、入った入ったー、なんてね」

 ハニービーはあくまで明るい。とても襲撃班を迎える態度に見えない。まるで久しぶりの実戦にワクワクしている様だ。


 黒服戦闘員の1人が元気無く門をくぐる。

「……まっす」


 ハニービーが手でそれを阻む。

「ん?あら黒服君、今なんて言ったの?まっす?」


「いやあの、失礼しますって……言いました」


「そんなんじゃ聞こえないわよー!挨拶は大っきい声でぇー!」

 ハニービーの声は近所迷惑も省みず、腹から出ている。


「し、失礼します!」


「よぉーし!」

 真佐江は黒服戦闘員の背中を思い切り叩いた。ヒーロースーツはパワーアップしているが、黒服のそれはただの全身黒タイツだから堪らない。

「痛ったーーーっ!」

 バチーンと言う音と共に転がる黒服。


「はい、次の方ぁー?」


「お、お、押忍!お願いしまぁーす!」


「はい、声がまだ小さい!」

 バチーン!


 真佐江の思わぬ体育会系ノリに呆気に取られるセイロンガー。

(何だコレは……こいつら襲撃しに来たのに、これでは文字通り入門ではないか……)


 結局、黒服6人全員が背中を叩かれ転がっている。後半の黒服は渾身のイーッまで出したが、逆にそれは嫌いと言われて尻も蹴られた。


「で、あなた達2人が怪人ね、お猿さんと……何かしら、ワニ?」


「猿じゃねぇ、ゴリラだ!ゴリラ怪人暴れ太鼓だ!」

 暴れ太鼓が胸を張る。ドラミングしたら頭を叩こうと待ち構えたセイロンガーだが、シーンとした高級住宅街で自重した様だ。


「お、おではコモド怪人ヨ、ヨダレだ……」

 ウィーン、シュボボボッ


「はいはい、ゴリラさんとヨダレさんね。じゃあ元気良く門、入ろうか!」


(怪人にもやるのか、真佐江さん……)


「おう!邪魔するぜ!」


「いいわね、元気良くて!ゴリちゃん」

 ゴリラは威勢の良さで背中バチーンは免除された。


「はい、次ヨダレちゃん!さぁ、来い!」


 ヨダレは不安げにチラッとセイロンガーを見た。セイロンガーは顎でさっさと入れと促す。

 

「おぉ!おでっ!おではっ!門!は、はいるっ!」

 ……ウィーン、シュボボボボーッ

 

「……まぁ、いいわ。入りなさい……」

 ヨダレは、良くわからないが、免除された。


「真佐江さん、真由美さんは?」


「部屋に入って鍵閉めて勉強してなさいって言ってあるから大丈夫よ、ごめんなさいね、セイロンさんこんな時間外に」


「いえ、近いですし、真由美さんの警護は私の仕事ですから」


「でも、壽翁さんは言ってないと思うけど、ウチの警護、5人3交代制で24時間シャドウトルーパーズっていう部隊がやってくれてるのよ?」


「え?初耳です。この中に5人も?」

 その言葉に呼応するかの様に、庭の灯籠から1人、松の木の根元から1人、枝の上に1人、3人が顔を見せた。その姿は暗がりに黒装束の為、はっきりとは見えない。

 1番近い灯籠の男が声をかけた。

「セイロンガーさん、いつもお疲れ様です。敷地内は我らにお任せ下さい」


「はい、宜しく頼みます……」

 セイロンガーは底知れない五百旗頭壽翁の力に恐ろしさすら感じた。

(まるで江戸城を守る御庭番……それにしても、5人も居て気配すら気取られないとは、余程の手練れと言える……)


 3人のシャドウトルーパーズは再び闇に溶けた。


 忘れていたが、襲撃班の一味は真佐江によって行儀良く整列させられていた。


「はい、じゃあ元気良くね、道場に出発よ!」


「おい、セイロンガー、ありゃ何だ?何もんだ?」

 1番後ろを歩きながら暴れ太鼓が聞いた。


「あの人はハニービー、スカイホーネットの奥さんだ。知らんのか?」


「おい、じゃあヒーローが3人も居るじゃねぇか。話が違うぞ!」

 

(実際はもっと居る事を俺も今知ったわけだが……)

 

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