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ど正論ヒーロー セイロンガー  作者: 月極典


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49/113

正論(49)ヴィラン組み手③


「さて、それではセイロン君こちらへ」


「はい」

 セイロンガーはスーツ、シャツを脱ぎ、綺麗に畳んで前に進み出て、スカイホーネットと相対する。

耳の横にあるボタンを押しウィーンカシャッと口が開く。

 

「ぷふぅーっ」

 深呼吸し、息を整えるセイロンガー。


 ハニービーこと五百旗頭真佐江が両者の間に立つ。

「私が合図を勤めます。壽翁さん、頑張って。セイロンさん、壽翁さんのヴィランは強いですよ、気をつけて下さいね」


 両者の準備が出来たと見るや、片手を上げた。

「それでは……始め!」

 

 合図と共にステップを踏み歩きながらスカイホーネットが口火を切る。

「くっくっくっ……、最近この辺りに羽虫の様に湧いている口喧嘩の強いヒーローとはお前か?あーーん?」


「出たな、スカイホーネット。問答無用だ、口喧嘩だけかどうか自ら試して見るが良い」

 テンプレ台詞で応じるセイロンガー。


「まだだ、まだまだ、お前セイロンガーと言ったか?なぁーにが正論だ笑わせやがる!やれスーツが汚れたから弁償しろと借金背負わせたり、やってる事はヤー公と変わらねぇじゃねぇか!それにだ、最近は何だ?女子高生と毎日ドライブデート三昧らしいな?おいおい、それの何処がヒーローだ!どの辺が正論なんだ!」


(くっ……流石は壽翁さん。自分で依頼した娘の護衛任務までディスってくるとは……。しかし真佐江さん程の直球の悪口では無い)


「もう良い、スカイホーネット。正論は口喧嘩の道具ではない」


「はぁ?じゃあ何だってんだ!」

 

 セイロンガーは拳でドンドンと胸を叩いた。

「正論は……『信念』だ!」


 次の瞬間、2人は走りながらお互い飛び蹴りを放つ。

同じ格好で交差し、立ち位置を入れ替えて着地する両者、一瞬早く立ち上がり走り込み様、着地したスカイホーネットの後頭部に蹴りを入れるセイロンガー。

それを前に倒れながら避け、更に軸足を取りに行くスカイホーネット、しかし、セイロンガーは蹴りの反動から軸足を回転させ飛び上がり、スカイホーネットの背中に乗った!


 一瞬躊躇はあったが、セイロンガーは後ろからマウントを取る形でスカイホーネットの後頭部から側頭部にかけてパンチを叩き込む。ジークンドーで鍛えた打撃は、ヒーロースーツのパワーが無かったとしても強力で、手でガードする隙間をぬって的確に打撃を与えていく。


 ミシッ、ミシッ、ミシッ……スカイホーネットのマスクが今にも割れそうな音を立てて軋む。


「ハニービー!チェックヒム!ハリアップ!」

 尚も打撃を加えながら、スカイホーネットの意識があるか確認する様、要求する。

 

(なぜ英語……私、日本人よセイロンさん?)

ハニービーはスカイホーネットの片手を持ち上げる。しかし、その手は落ちる事なく、親指でサムアップし、まだ意識がある事を示した!


「ぬぉぉぉ……!ふぬらぁあ!」

 スカイホーネットは足を曲げ、踏ん張りながら渾身の力で立ち上がり、マウントを無理やり抜けた。


 ヒーロー同士の決着は早い、何故なら互いの攻撃力が高いからだ。次の技で決まる、ハニービーは予見した。


 スカイホーネットは決め技、高高度ニードロップを放つべく、天井に向けて飛び上がった。しかし、先程のダメージから若干上昇が足りない。そこへほぼ同時に飛び上がったセイロンガーが追い付き、腰に抱きついた!


 ルー・テーズ式、腰で投げるバックドロップ。

空中からの板張りの床への脳天逆落としが決まった。

いかにスカイホーネットが歴戦のヒーローでも立ち上がる事が出来ない。


 ……パリンッ

スカイホーネットのヒーローマスクがこの戦いの影響で割れてしまった。


「参った……」


「勝者、セイロンガー!」

 ハニービーがセイロンガーの手を掲げた。


「大丈夫ですか?壽翁さん」

 セイロンガーがスカイホーネットを心配そうに覗き込む。


「なんの、しかしヒーローマスクを割られたのは初めてだよ……」


「久しぶりに思い切り戦えました。有難う御座います」

 セイロンガーは丁寧に一礼した。


「ふむ、善き哉」

 倒れたまま、スカイホーネットは答えた。


「あらやだ、もうこんな時間。セイロンさん、晩御飯食べて行くでしょう?」


「はい、それでは、お言葉に甘えて」


「今日はねぇ、2日目のカレーよ!カレーは2日目が美味しいのよ!」

 真佐江は嬉しそうに言った。


(そうだった!鬼島から聞いていたのにお昼にライスカレーざるセットを食べてしまった……)


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