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ど正論ヒーロー セイロンガー  作者: 月極典


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43/114

正論(43)無理を通せば道理が引っ込む


 VVEI大曲研究室。

 

 西口麻里の案内でブラック・オウガを大曲博士の元に連れて行くセイロンガーと嫌々肩を貸す守銭奴大佐。


 大曲博士は研究室の奥で新しいスーツの調整中の様だ。そのスーツは青く形はセイロンガー達の物と似通っている。


 声をかけるセイロンガー。

「久しいな、大曲博士」


「ん、これはどういう状況かな?黒の衝撃と赤い稲妻がお揃いとは……」


 赤い稲妻……落ち込みながら案内した麻里は図らずも思ってしまった、白いスーツだったらやっぱり白い恋人なのだろうか……。自分がもし改造されるなら白い恋人、ホワイト……ん〜マリリン。だっさ!


「説明は後だ、まずは鬼島の腰を診てやってくれ」


「ふむ、うちの怪人をまた壊したのかね?セイロンガー」

オウガを診察台にうつ伏せに寝かせ、患部を診ながら大曲が言う。この所、やれ顔から足が全部取れたタコ怪人やら、取られた足を猫に盗まれたカニ怪人やらが運ばれて来て忙しいのだ。

 

「いや、やったのは私ではない。スカイホーネットとやり合って負った怪我らしい」


「スカイ……五百旗頭社長か!引退したと聞いていたが復帰したのか、そうかぁ……それは、やんぬるかな」

 やはり五百旗頭と大曲は知り合いのようだ。やんぬるかなと言う言葉もそれを示している。


 守銭奴大佐は早くこの場を立ち去りたい。

とても嫌な予感がする。

「セイロンガー、そろそろ私は……」


「まだだ」


「……」

 まだ駄目らしい。


 そんな守銭奴大佐に構わず大曲博士。

「ふむ、と言うことは、黒、赤、黄が揃ったのだな、これは見たかったぞ。なんせ、全て私の作った逸品だ」


「何だ、あんたあの五百旗頭と知り合いかよ」

 何なんだコイツら変に繋がってやがるな。


「知り合いも何も、前は五百旗頭社長の元で研究していたからな。色々あってな……今は敵味方に分かれているが、昔は良く一緒に遊んだものだ、3人でな……」


「あぁ、あの美人のカミさんの事か?」


「真佐江ちゃん……元気だったかね?」

 大曲は寂しそうに何かを思い出しながら尋ねた。


「元気も何もアイツも変身してカレーを持って来やがったぞ」


 黙って聞いている麻里、全然話が理解出来ない……。

複雑な人間関係、変身してカレー?どゆこと?


「そうか、彼女のカレーは美味いからな……」

 

 あー、なんかわかったかも。

 

「で、どうなんだ?腰の方は」

 診察を催促するセイロンガー。大曲の思い出話で真由美の下校時間に遅れる訳にいかないのだ。


「そうさな、強化ボディでもカバーしきれないほど腰が壊れている、良くここまで来れたと言える。手術が必要だな」


「そうか、この際悪い箇所は徹底的に治す事だ。私は用が済んだから帰るが……守銭奴大佐?」


「ひぃ……」


「そう怯えるな。さっき放送でオウガが裏切ったとか何とか言っていたが、それは勘違いだ。この怪我はVVEIの業務で負ったもので労災の範囲となる。そうだろう?」


「労災……契約的にどうだろうか?調べてみないと」

 守銭奴大佐は知っている、この話し方、セイロンガーが無理を通す時のやつだ。


「いや、調べるには及ばん。今決めるんだ、守銭奴大佐。お前の責任において彼を復帰まで面倒見てやれ」

ほら出た!必殺の無理を通せば道理が引っ込む、なーにが正論ガーだ!

 

「この、このモンスターヒーローめ!」


 そのやり取りを聞いていた麻里。

モンスターペアレンツみたいな言い方……。でも、管理人さんの優しさのゴリ押し、素敵です。

自分の立場はとうに忘れている様だ。


「おい、セイロンガー。何でそこまで……お前にゃ何の得もねぇだろうが」


「さぁな、また万全なお前と戦いたいんじゃないか?」


「へへっ、そうか。じゃあまたな。ありがとよ!」


「ふーむ、得は無いけど徳はある、か。善き哉」


 セイロンガーは静かに研究室を後にした。

 

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