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ど正論ヒーロー セイロンガー  作者: 月極典


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40/113

正論(40)VVEIの赤と黒


 VVEI、1階ロビー。セイロンガーを取り囲む30人程の黒服戦闘員。セイロンガーは彼らに呼びかけながら静かに歩みを進める。

 

「私は戦いに来たのでは無い、大曲博士に用がある。そこをどけ、研究室は地下だろう」


 黒服戦闘員が騒つく。

「スーツだ、高級スーツを着ている……」


「あれを駄目にしたら天引きで弁償だぞ」


「どうやって戦えと言うんだ……」


 ふっ、こんな時は高いスーツで邪魔されないのも悪くないな。セイロンガーは自嘲気味に思った。


 ドン、ドン、ドン!カラカッカッ、ドドン、ドン!

 ドン、ドン、ドン!カラカッカッ、ドドン、ドン!


 2階から太鼓の音が鳴った。2階と1階ロビーを繋ぐ階段の踊り場に現れたのはゴリラの怪人とトカゲの怪人であった。


 セイロンガーはそれを見とめると、辺りの戦闘員に

「おい、お前ら動物園からゴリラと爬虫類が逃げ出してるぞ」


 それは東東京の武闘派、ゴリラ怪人暴れ太鼓と、コモド怪人ヨダレ。セイロンガー攻略の為、本部に呼び出され、喫煙所でブラック・オウガに絡んで逆に〆られたが、どうやら復帰したようだ。


「何をビビっている戦闘員共!そんなにスーツを弁償するのが怖いか、あーん?要はそいつを殺しちまえば良いのだ!死んだら弁償もクソないだろうが!」

 ドンドンドンドンドコドコドコ……ドン!暴れ太鼓は胴体の大太鼓をドラミングした。


「驚いた。このゴリラ、人の言葉を話すぞ?」

 わざと驚きを見せるセイロンガー。


「だから動物園から逃げたゴリラじゃねぇ!俺はゴリラ怪人暴れ太鼓だ!」

 ドンドンドンドン!


「おでは……ジュルッ、コモド怪人ヨダレだ!ジュルルッ」

 続けてヨダレが名乗るが、ただでさえ垂れている涎が喋ると大量に放出される。


 ヨダレに向かって指差すセイロンガー。

「そっちの爬虫類は二度と喋るな、ヨダレが凄い。掃除が大変だ」


「ぷぷっ」

 戦闘員の何処かから笑いが起きた。


「だでだぁ!ジュルルッ今笑ったのはぁ!ジュルッ」


「Shut your mouth up!!」

 セイロンガーは口を閉じろと言うまんまの意味を込めて英語で一喝した。


「……何て?」

 暴れ太鼓もヨダレも教養は皆無だった。


 ウィーン。

 正面入り口の自動ドアが開いた。

ブラック・オウガが手をつきながらヨタヨタとロビーに入って来た。


「鬼島、待っていろと言ったろう?」


「これ以上、てめぇの世話にはならねぇ。……もういいから帰れ!」


 それを見た暴れ太鼓、ニヤリとして。

「へぇ……ブラック・オウガさんよぉ、随分と痛めつけられていやがるなぁ?」

 ドドン!暴れ太鼓は驚異的なジャンプ力で階段の踊り場からセイロンガーを取り囲む戦闘員を飛び越えてオウガの目の前に着地した。


「へへっ、弱いクセしやがってジャンプ力だけはあるんだな?」

 喫煙所では暴れ太鼓を圧倒したものの、今のオウガは戦える状態では無い。


「ジャンプ力だけかどうか、試してみろ!」

暴れ太鼓が両手を振りかぶり、振り落とそうとした。


 ドン!!

太鼓の鈍い音が鳴った。

いつの間にか、暴れ太鼓の背後に移動していたセイロンガーのワンインチパンチが背中の太鼓を突き破っていた!

ドーンと後ろに倒れるゴリラ怪人暴れ太鼓。


「へっ、相変わらずのパンチだな」


「研究室まで肩を貸そう」


 セイロンガーの肩に手を置き、何とか歩を進めるブラック・オウガ。

取り囲む戦闘員は何が何やら分からない様子でそれを見守る。分かるのは一戦闘員がどうこう出来る状況ではない、それだけだった。


 コモド怪人ヨダレがロビーに降りてこようとする。

しかし、セイロンガーが指差してそれを制する。

 

「おい、トカゲ。その涎を拭って出直して来い、そのまま近寄ったら……殺す」

 

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