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ど正論ヒーロー セイロンガー  作者: 月極典


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37/113

正論(37)カレーを持って来た者


 ぐぉぉぉ……ぐぉぉぉ……ぐぉっほんっ!

おぇっ!んん……寝てたか……あぁ……鬼島だ。


 道場で布団ひいてうつ伏せに寝かされるたぁ情けねぇ……。

 

 セイロンガーとスカイホーネットか……ヒーローってのは強い奴が多いな。それとも俺が20年のムショ暮らしで弱くなってんのか?

いやいやそれはねぇ、タックル避けんのに2階の天井まで飛ぶ奴見た事ねぇわ。しかもあの浴びせ蹴り、あの高さから反動つけて飛んだのに咄嗟に出せるか?最初から狙っていたならまぁ分かる……いや、にしてもわからんわ!


 面倒くせぇから現役時代と同じ感覚で闘ったが、恐らく、このスーツでの闘い方を見直さなきゃならんのだろうな。そう言えば、もらった取説も読んでねぇわ。


「鬼島さーん、起きてますかぁ?」


 五百旗頭のカミさんか、丁度良い、美人のカミさん人質にしてここから抜け出すか。


「お昼ご飯持って来ましたよぉ、昨日の残りのカレーですけど、いかがですかぁ?カレーは2日目が美味しいって言いますでしょう?私はね、冷飯に熱々のルーをかけて食べるのが好きなんですよ?娘ははしたないって言うんですけど、やめられないの。だから私の分のご飯は昨日のうちに冷蔵庫に冷やしてありますのよ」


「……悪いな、奥さん。丁度腹減ってた所だ」

 初対面の得体の知れない男相手によく喋るカミさんだな。


「はいはい、すいませんねぇ本当に、五百旗頭が乱暴してしまって……」


 ゴトッ、ゴトッ、ゴトッ、ゴトッ


 何だこの足音……。


「じゃあカレー、ここに置いて置きますから。お替わりありますから遠慮なく言って下さいね」

 ゴトン、ガシャ


 俺はカミさんの姿は死角で見えなかったが、カレーを置いた腕を掴んだ。しかし、その腕はビクともしなかった。それどころかだ、腕を捻られて仰向けにされた。


「いででで」

 激しく痛む腰と腕。


「あらあら、まぁまぁ、お痛はいけませんよ?鬼島さん」


 見上げたカミさんは五百旗頭と同じカラーリングのヒーロースーツを着ていた。


「カミさんもヒーローかよ!」


「元ヒーローのハニービーですわ。さぁさぁ、カレーが冷めない内に召し上がって下さいね」


 カレー食ったら帰るか……。

  

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