正論(33)赤いスーパーカー
鬼島だ。
今日は非番だが、個人的に赤い奴と戦いに来た。
正直、あの娘はどうだって良い。久々に強敵と出会って血が騒いでしょうがねぇんだ。
あそこが五百旗頭邸か、ここで待ってりゃアイツが迎えに来るはずだ。
ボボボボ……ボボボボ……ヴォン……ボボボボ……ボボボボ……ヴォンヴォン……
なんだ?この腹に来る重低音。
何か来るぞ?何だ?後ろか!
うぉっ!すげぇ真っ赤なスーパーカーが来やがった!おいおい、やっぱりこの辺は高級住宅街だな……。
しかも、あまり煩くない様に無駄にエンジンふかさないところが憎いぜ。
ん、五百旗頭邸の前に停まったぞ?
おっ、あの娘……って事はあれを運転してるのはアイツか!
くそっ!間に合うか?あぁ、娘がガルウィング開けて乗っちまった!
ヴォン、ヴォーーーーン……
あっと言う間に走り去りやがった……。マフラーから火吹いてたぞ?かっけぇな……。
あのネェちゃんに知らせてやるか。
「もしもし、鬼島だ」
「水沢です。今日オフですよね?オウガ」
「いや、たまたま五百旗頭邸に通りかかったんだが、娘の送迎が車になったぞ?しかもドえらいスーパーカーだ」
「(あの地下駐車場の何千万もしそうな真っ赤なスーパーカー、管理人さんのなんだ……控えめに言って、素敵!)そうですか、オウガよーーーく聞いて下さい。絶対にその車を追いかけてはいけませんよ?傷を少しでも付けようものなら会社の大損害になります」
「敵の車なのにか?」
「はい、セイロンガーは普通にうちの会社に損害賠償請求してきます。過去、彼のスーツと靴を駄目にした怪人は80万円の借金を背負っています」
「えげつない奴だな、しかし俺が戦った時も着ていたスーツが駄目になったはずだが?」
「それが、その請求は来てないんですよね。よくわかりませんが」
「まぁ、どうせ走っても追いつけん」
「それに、オフの日に指令もないのにセイロンガーを倒してもノーギャラですからね」
「全くケチくせぇ事ばかり言いやがって!ぶっ殺すぞ!」
あっ、電話切りやがったあの女!
「君、うちに何か用かね?」
「あ?おっさん誰だ」
「私はこの家の者だが、人の家の前で大きな声でぶっ殺すぞとは穏やかじゃないね」
「おっさん、もしかして五百旗頭壽翁か?」
「だったら?」
「戦うに決まってんだろ?」
「私はもう引退した身なんだが……戦うにしても、ここでは近所迷惑になる、こちらへ来なさい」
へへっ、来た甲斐があったぜ!




