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正論⑶ 新規開拓の極意


 あ、あの真由美です。


 私は今、廃倉庫にいます……。


 あのイカルガ?さんと。


 どうしよう、せっかくこの前セイロンさんが助けてくれたのに、また攫われちゃった……。


 ガチャッ


「私は通りすがりの……ん?」


「まーーたお前か、今度は邪魔させんぞ」


「がっかりだな」


「うるさいうるさい!俺はあの後すぐに体育大学の学生をスカウトに行ったんだ!」


「すぐ?3日後だろ?」


「なぜそれを!」


「まぁいい、スカウトに行きました、それから?」

 

「そしたらな、次から次へと体格のいい学ランの学生が現れてだな、やれイカ臭いだの、お前はどこのプレデターかだの言われてめちゃくちゃ絡まれたんだ!」


「そうか、大変だったな。しかし、営業の仕事っていうのは……」


「おれは営業職じゃねぇ!怪人だ!」


「そういやそうだったな、それで?」


「しまいに熱々の七輪持って来やがったから、手持ちの現金3000円を払って逃げたんだ」


「お前の顔のゲソを炙って肴にしようと……そいつは中々に……失礼、しかし3000円で済んだのなら良かったな」


「良くない!そのおかげで給料日までの10日をあと500円で……」


「あ、あのイカルガ?さん、もし良ければ私、お小遣いがいつも余るので3000円くらいなら……」


「娘、甘やかしてはいかん。それに、そのイカにもプライドがある。女子高生から恵んで貰うなど出来まい」


「いや、おれはくれるものは貰う主……義」


「ちなみにイカ、その体育大学と、声をかける相手はどうやって決めた?」


「スマホで『体育大学 近所』でググったんだ!」


「くだらん。お前がやってることは仕事ではない、まるで子供のお使いだ」


「まーーた説教か!」


「やめてガチンコでバトるか?」


「い、いや一応聞かせてくれ」


「いいか?山にキノコ採りに行くとする。本来、キノコに詳しくないお前はまず、その山で採れるキノコを調べるはずだ」


「確かに、調べもせずに毒キノコにあたったらかなわんからな」


「そうだ、色、形などの特徴、採取可能な季節、場所、方法などを調べてから行くはずだ。しかしだ、お前の今回のスカウトは何だ?まるで手ぶらで山に入って一番最初に目に付いたキノコを採ろうとしたら毒キノコだった。それをさも運が悪かったかの様に言っていたが、やるべき事をやらなかった当然の結果ではないのか?」


「確かに……体育大学に行けば何とかなるだろうと甘く考えていたかもしれん」


「しかも、よりによって学ランの大学生に声をかけるとは、自ら毒キノコを選んで採るが如き行いだ」


「何故学ランが駄目なのだ、チャラチャラしてないから真面目だと思ったんだ」


「あれはな……応援団だ」


「なんだと!?」


「しかも、自分達を大学を守る自警団くらいに思っている。だから絡まれたのでは無く、正門で明らかに不審なイカの怪人を撃退した正義の行いだった。無論3000円など払う必要も無かったのだ」


「おれのリサーチが足りないばかりに、勘違いし3000円無駄に払ったとは……」


 イカルガ?さんは膝をついて悔しがりました。もしかしたら泣いていたかもしれません。


「わかったら、まずリストアップから始めるんだ、そしてリサーチ、精査、それからスカウトだ。3日後ではなく、今日からな」


 イカルガさんは、また肩を落として帰ろうと出口に向かいました。

 

「ちょっと待て、あと10日活動資金も無かろう」


 セイロンさんはエコバッグから財布を取り出して、5000円札を渡しました。


 イカルガさんは黙ってお辞儀をし、ドアから出て行きました。


「あの……セイロンさん、また助けていただいて本当にありがとうございました」


 お礼を言って私が帰ろうとすると……。


「娘、待ちなさい。2回も攫われた君には説教が残っている」


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