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ど正論ヒーロー セイロンガー  作者: 月極典


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101/113

正論(101)生中継が終わり……


 ここは五百旗頭邸リビング。

 

 テレビの前のソファには、IHAに保護された水沢雪菜と、ハニービーの格好をした五百旗頭真佐江。

 

 「う〜ん……」

 テレビの生中継が終わった。真佐江は腕組みして呻き声を上げた。リビングでくつろぐ黒と黄色のド派手なカラーリングのヒーロー、傍から見るとなんともシュールである。


「どうしたんですか、真佐江さん。そんなに難しい顔して。まぁ表情はマスクでわからないんですけど」

 真剣に会見を観ていたはずの真佐江が、心配の声ではなく呻き声を出したことに、雪菜は思わず尋ねた。


「面白いわ、セイロンさん。面白すぎるといっても過言ではないわ!」


 ズルッ。雪菜は肩をすくめて、僅かにずっこけた。

「会見が、ですか? 多分あの人、大真面目にやってるだけで、これっぽっちも面白くしようとしてないと思いますよ?」


「そこよ、雪ちゃん!」


(雪ちゃん……あっという間に距離つめてくるなこの人)


「本人は何ひとつボケてないのに、場の空気を支配して報道陣からオモシロを引き出していたわ。天才的なMCだった……」


(MC……何のつもりで観ていたんだろう、この人)


「私、これから壽翁さんとIHAの会見があるんだけど、あんなに面白くできるか自信がないわ」

 本来なら、17時から始まる予定だった会見だったが、セイロンガーの会見が長引いており、19時からに変更してほしいと報道陣から異例の要請があった。


「真佐江さん、マジレスしますね。面白くする必要なんてないですよ? 真面目にやって下さい」


「あらぁ……」

 雪菜のマジレスに真佐江は残念そうに答えた。



 IHA東京トレセン談話室では、テレビの生中継が終わり、拍手が鳴り響いた。

真由美である。


 パチパチパチパチパチパチ!

「さすが、セイロンさん! エミリーもナイスフォロー!  外人のお兄さんも、なんかナイス!」

 ソファで身体をピョンピョンとバウンドさせながら、まるでスポーツのテレビ観戦のような反応の真由美。


「無邪気で可愛いですねぇ、真由美ちゃん」

 麻里が小声で言いながら大曲博士を見ると、彼は目を細めて複雑な表情で真由美を見ていた。


 大曲博士は、視線を慌てて外して呟く。

「あ、あぁ。そうだな……」


 麻里は以前、五百旗頭夫妻と博士が友人だった話を聞いている。その話しぶりでは夫人と博士との間には、何か事情がありそうだった。単純に博士の横恋慕かもしれないけれど。

 

 そこへ、バイクで外出していたトゥエルブが現れた。

「ずいぶん盛り上がってますねぇ。まるで野球の試合でも観ていたようですよ、真由美お嬢様」


「お帰りなさい、トゥエルブお姉さん! セイロンさん、凄かったんですよ! 柄の悪い記者は追い返すし、リポーターのお姉さんはマンション借りたいって言い出すし、おじさんのリポーターは元演歌歌手だし!」

 真由美は興奮して雑な説明をする。


「あははっ、よくわからないけど会見、セイロンガーさんの優勢だったみたいですね。はい、これ、皆さんの着替え買ってきました」

 トゥエルブは近くのコンビニに、皆の着替えを買いに出かけていたのだ。それぞれに着替えの入った紙袋を渡す。


「すみません。ありがとうございます、トゥエルブさん」

「ありがとう、助かるよ。トゥエルブ」

 礼を言って着替えを受け取る江口麻里と大曲博士。


 真由美は立ち上がり、言いにくそうに切り出す。

「あの、お姉さん。私、やっぱり帰ります! テレビの中継終わっちゃって気になるから……」


「もう、セイロンガーさんのことになると急に我儘になるんだから……。大丈夫ですよ、ネット配信番組で今も中継してるから」

 トゥエルブはそう言って端末をテレビモニターに繋いだ。再び画面に映るセイロンガーの姿に、真由美の瞳が輝きを取り戻した。

 

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