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クラウン・ヘッド  作者: ボム乱獲丸
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大英雄は乙女/冒険者レイフィム


謁見の間にて


「此度のクラウン・ヘッド討伐、見事であったぞ。アンドラ、並びにアーリア・ファルネス。」

「「ありがたきお言葉。感謝いたします。」」


形式だけの礼をし、女王は言葉を続ける。


「先の魔人は、災厄の獣では無いと言うことは本当か?」

「はい、アレなる物はイレギュラーに発生した物と考えます。」

「私も、同意見です。」


災厄の獣では無い。と聞き、狼狽える貴族達。


「落ち着け、皆のもの。続けよ、アンドラ。ファルネス」

「はい。理由は2つ、1つは人に近しい理性を完全に有していた事。それに伴い、争うつもりは無いとも言っていました。」

「もう一つは、私から。最大の理由として、宝具が出現しなかった事です。」


その一言に、顔を歪める女王。


「では、他に何か落とした物は?」

「……太古より昔に存在した神話の時代。ノヴァをご存知でしょうか?」

「ああ、知っている。我々に敵対する魔機道国がそれらの時代のアイテムを解析、兵器として運用している。」


ノヴァの時代。太古より昔、エルフ族でさえその当時を知る物は極々一部。神話の時代とも言われる。


「こちらをご覧下さい。これは、彼の魔人が死亡時に落とした腕です。」


取り出したのは、レイフィムの腕。そのもげた腕は、内部が異常な輝きを持つ宝石で造られている。そしてそこに内包された魔力は、計り知れない。


「この腕を作り出している鉱石の名は『ノヴァの神石』神話の時代に於ける、英雄達が装備していたとされる最高級の鉱石です。」


思わずその場にいる全員が息を呑む。


「魔人クラウン・ヘッドの正体は、恐らく。神話の時代に造られた命を持つホムンクルス、ノヴァのゴーレム。で間違いないかと。」

_____


「はぁ、疲れた。」

「お疲れ様、アンドラ。」


王女の部屋にて、兜を取るアンドラ。長い白髪が靡き、同時に声色が変化し女性らしい声へと変化する。大英雄アンドラは、女性だった。


「まったく、姫は無理しすぎだ。作戦で忙しくて話せなかったが、聞いたぞ?魔人に一騎討ちを申し込んでボロ負けしたとか。」

「も、もう!仕方ないじゃ無い!あの時はアンドラも居なかったし。私が出るしかなかったのよ。そ、それより!アーリアはどうしたの?」


アーリアもまた、アンドラの秘密を知る親しき仲間の1人だ。


「アイツは魔人に全魔力放出したせいで、疲れてるんだとよ。謁見した後すぐ、暫くは動けないって宿に戻ってった。」

「アーリアが全力……それ程だったのね。けれど!よかったわ、討伐できたんだから。」


そう喜ぶ女王だったが、アンドラの顔は暗いまま。まるで何か悩んでいるかのように。


「俺はな……魔人と一騎討ちして、負けちまった。作戦通り、その不意をついてアーリアが倒したんだがな…………クラウン・ヘッドは、俺を庇いやがった。」

「魔人が……貴方を?」


アーリアの専用武具スキルは、アンドラを巻き込んだ無差別砲撃だ。偶然にもレイフィムの攻撃によって、アンドラは無傷だったのだが。


「あの魔人野郎、最後まで本気じゃなかったんだろうさ。戦いを避けて、背後にいる冒険者に対しても一切危害を加えない様に配慮して戦ってた。俺との一騎打ちも、完全に信用しきってた。」

「あの魔人に、そんな事が……」


目を瞑り、もしあそこであいつを倒さなかったら。と考えて、その邪な考えを振り払った。


「戦士として名折れだぜ、戦意のねえ相手を不意打ちで倒したなんて。」

「アンドラ……」 


気難しい空気が、漂っている。


「はぁ……イケメンだったのにな。」

「っ……少しでも乙女だなあ。なんて思った私の考えを返してほしいわ。」


王女と英雄。2人は冗談を言い合って、疲れを労うのだった。

_____


「どうしましょう……里に帰ろうかしら……こんな体たらく、族長様に申し訳が立たないわ……!」


ベッドでのたうち回るアーリア。魔術師としても冒険者としても、全てにおいて魔神に完敗してしまったのが理由だった。


「いつ魔人が現れるのか、思い出すだけで体の震えが止まらないっ!」


専用武具による恐怖状態は既に解けている。だと言うのトラウマは治らない。


「次あったら絶対殺すわ……!」


1人復讐を誓うエルフ族最強の魔術師、しかし当の本人である道化師がすぐ近くにいる事には気づいていなかった。


そう、場所は宿屋一階。


「成程〜ありがとうございます!」

「いいのいいの!一人前の冒険者目指して、頑張れよ!」


受付で宿屋の店主と話すのは、紫色の髪をした普通の青年。レイフィムは現在、剣士としてエルブレンの街に潜入していた。


「よし、冒険者ギルドはあっちだな。」


完璧な変装が出来ているのは、道化師のスキルによる物。演技や変装に補正がかかると言うネタ仕様なのだが、この世界ではめちゃくちゃに有能だ。



「本当に最初からこうしてればよかったな……。まあ、アレはあれで収穫はあったんだが。」


お陰でこうして一切不振がられる事なく潜入できている。ちなみに胸元にかかったネックレスは、魔力を隠蔽する装備品。そして、収穫と言うのは専用武具をドロップするワールドボスの、リポップについてだ。


因みに、取れた片腕が普通に再生しているのはポーションの効果だ。飲んだ瞬間に生えてきて気味が悪かったが、一瞬これ使って無限に鉱石増やせるのではとも考えたが……痛いのには変わりないので辞めておいた。


「にしても、なかなか良い国だな。エルフも獣人も人も暮らしている。」


道ゆく人々が活気付いている。広さも建物の大きさも中々、売られている商品もゲーム時代で言えば序盤の街と言って差し支えない。


「おっさん、その剣いくらだ?」

「銅貨15枚だよ。」


街を歩きながら、売られている品々を流し目で確認していく。


(武器の質はかなり悪いが、値段相応の物もある。特にあのガイラル武具店は良い店だな。)


物の品質を見定めるスキル『鑑定』を使用しつつ、冒険者ギルドの方へと足を向ける。生憎文字は読めないが、お金はある。


「魔道具屋の店主には感謝だな。」


潜入した直後、この国の貨幣とノゥヴァズゼードの貨幣が違うことに気づいた。その時ふと目に入った、魔道具店。そこでインベントリにあるC級アイテム【花火玉】を売却し、その結果銀貨15枚と銅貨50枚になったわけだ。


(値段で言えば……15万くらいか。冒険者の登録には銀貨1枚必要だし、丁度いい。)


今の装備は、lv30程度の装備だ。周囲の人々の会話を盗み聞きしている感じ、このエルブレン王都周辺の魔物はlv10付近が大半。なので、ステータスも過負荷の指輪で50レベル付近まで落としている。


「よし」


一際大きな剣と杖の看板、ここが先程店主の言っていた冒険者ギルドだろう。

扉を開けて、中に入る。


「……?」


入ると同時に、鋭いナイフが3本飛んでくる。しかし、その全てのナイフが幻術だと理解した。避けるそぶりも見せず、突き進む。


「これが冒険者式のお出迎えなのか?悪趣味だな」


言葉と同時に騒がしくなるギルド内、周囲を見渡せば色々な種族の冒険者達が酒を飲みながら依頼を見繕っている。そして、おそらく魔法を放ったであろう人物、フードを被ったガタイの良い獣人に向かって歩く。


「驚いた、誰が発動したかまで見破られるとはな。合格だぜ?肝の座った兄ちゃん」


フードを取れば、その顔は明らかに人を食ってそうな顔付きのオッサン。多分ギルド長だろう。


「俺はファンタグル・ローディマン。エルブレンのギルド長さ。新人にはこうやって試してんのよ、死への耐性ってのをな。」

「俺にはただ脅かして、酒のつまみにしてるようにしか感じ無いがな。」

「はっ!まあそれもあるな!!!!」


ギルド長の声のデカさに眉を顰めつつ、受付へと向かう。


「冒険者登録に来た。頼めるか?」

「問題ありません。登録料は、銀貨一枚です。」


机に銀貨を取り出す。すると、背後から肩を掴まれた。


「おい兄ちゃん、オメエさんPT組む気はねえか?」

「PT?俺は……ソ……いや、そうだな。丁度いい。」


思わずソロで良い、と言いそうになった。しかし考えて見れば、情報を集めるのにPTは非常にやり易い。


「こちら、登録証です。無くした場合すぐに連絡して下さい、再発行の手続きをしますので。また冒険「ああ、説明はこっちでやっとく。」そうですか、わかりました。ギルド長。」


せっかくの説明を蹴り、人の肩を掴んで移動するギルド長。連れてこられたのは、食事をしている3人の男女のPTの席。


「紹介するぜ、コイツら期待の新生!パーティー名は盃の共々!自己紹介しな」

「初めまして、俺は……レイフィムだ。剣を振る事しか脳が無い戦士と考えてくれ。なにぶん田舎生まれでな、高いのはレベルだけだ。」


突然の紹介に驚きながら、赤髪の男は食べていた物をジョッキ一杯の水で流し込み立ち上がる。


「あぁ!初めまして、俺は盃の共々リーダーのブレル!ブレル・ライアンだ。戦士で、索敵もやってる」


赤い髪に成人男性らしい体、冒険を楽しんでそうな戦士だ。


「私はタスタロ、魔術師。」


続いて立ち上がったのは青髪ロングの少女、妙にデカい帽子をかぶっている。美少女と言って良い。


「僕はカリバル、召喚士さ。」


最後に立ち上がったのは、男か女か分かりずらい。多分女の召喚士。ボサボサ黒髪にメガネをつけている、ザ魔術師。


「コイツらなかなか将来性あるんだわ!ただ前衛が少ねえんだ、だからレイフィム!てめえを呼んだわけだな。」

「成程、確かに俺が居ればちょうど良さそうだな。」

「ギルド長、この人のランクは?」

「今登録したばっかだ」


その言葉を聞いてため息を吐くリーダー。どうやら期待に沿えなかったようだ。


「全く、人を見かけで判断できねえとは……オメエらまだまだだな。」

「って言われましても……俺らもCランクですから強く言えませんが、Dは流石に……」

「まぁ、とりあえず一回行って見ればわかる。」

「そうそう!ギルド長の推薦なら多分強いですって!」


リーダー以外は乗り気らしい。こちらとしてはどちらでも構わない、なんて考えていたらギルド長が居なくなっていた。どうやら話し合えって事だそうだ。


「……まあいいか。レイフィムさん、歳は?俺は21だが。」

「28だな、対人経験はあるが魔獣は少ない。その辺は頼りにさせてもらう。」

「無骨な戦士って感じ。」

「渋いですねえ!」


何かとハイテンションなこの召喚士はなんなんだろうか、と思いつつ。リーダーは納得してくれたらしい。


「じゃあ、レベルは?俺は15だ。普通にCランクって感じだな。カリバルもタスタロも15だ。」

「俺は……そうだな。25だ。」


25レベル。それは嘘でもなんでも無い。レベル自体は50なのだが、職業にそぐわない武器や防具を装備するとステータスが50%ダウンするシステムがある。この世界でも有効なのかは知らないが、保険的な意味合いでも25が最適。


「25っ!?B級レベルじゃねえか!」


思わず声を荒げるリーダー、しかしそんな声も他の冒険者達の声で掻き消される。


「成程、ならC級でも文句ねえな。」

「理解してくれるなら助かる。」

「強そうね」

「25は強いですよ!」


そんなこんなで勢い任せに作られたPT。果たして、初の依頼はどうなるのか。





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