自称最強の道化師、調子に乗る。
「はぁぁぁあ!!!!!」
姫騎士が取り出したのは、宝剣ミナクモの水剣。ゲーム中ではとあるモンスターのレアドロップだったが、強さ的には中くらい。つまり、敵では無いという事だ。
振り上げた剣と共にコチラに迫ってくる姫騎士、それを見つめて一切行動せずにただ立つだけのレイフィム。
「『ローズ・ストライク』っ!!」
ローズストライク、それはクラス【姫騎士】の専用スキルだ。防御無視であり、どんなにレベル差があっても攻撃が弾かれないスキル。剣が赤く染まり、その剣は確実にレイフィムの首を捉えた。
ガキンッ-
ボロッ-
しかし、砕けたのはレイフィムの首ではなく姫騎士の剣だった。なぜか、それはクラススキル【常時自動反撃】の効果。攻撃を喰らった瞬間自動的にカウンターを入れるという能力による物。このスキルは上位職全てに実装されている。魔獣相手にしか効果がなかったが、こちらではPVPでも効果がある様だ。
「わ……我が国の……宝剣……が?」
「あ、そんなに大切なんですカ!?すいません、壊しちゃいましタ。」
思わず謝罪してしまったが、その瞬間視界が炎に包まれた。
「炎魔法!『炎獄の風』っ!!」
「うわぁアッツイ。暑いって感じるんですネ。」
どうやら姫騎士は魔法も使える様だ。しかしその程度の攻撃では、ダメージを与えることも出来ない。自己バフによって強化されておらずとも、中級魔法は上級職には無効なのだ。
「くっ……!化け物め!!」
「……うーん。いい加減冷戦になれました?私あなた達に危害を加えるつもりはありませン。」
「それは、どういう意味だ。」
話を聞く気になったのか、ついに手を下ろす姫騎士。やっとか、と思いつつもゆっくりと近寄る。
「そもそも、私は敵ではない。ということでス。魔王だ魔人だと仰っていますがね?そもそも魔人ならわざわざ決闘受けないで殺せば良いでしょウ。」
「ではなぜ、その異様な規格外の魔力を解放してこの街に現れた。人智を超えているぞ。」
規格外の魔力。と聞いて首を傾げる。道化師はトリッキーな職業。魔力と攻撃力のバランスは並程度だ。別に魔力に優れているわけでもない。
「失礼ですね、一応人間ですヨ。元ですけど。」
「元……そうか、人の身であることを諦めたと言うことか。」
言う事成す事全て勘違いされている気がしてきたレイフィム。しかしここで敵対するのは避けたい、今この姫を力でねじ伏せたら国ごと敵対するだろう。この世界にどれほどの強者がいるか分からないというのに、その手は打てない。
「……あっそうだ。姫騎士、あなたの知ってる事を教えて下さい。例えばこの国で一番強い人とか。それこそ、この人がやられたら国が終わっちゃう〜くらいの」
「……いいだろう、教えてやろう。この国で最も強いのは、大英雄アンドラその人だ。」
大英雄アンドラ。聞いた事もない名前にまたもや首を傾げつつ、「まあいいでしょう」と頷く。
「そうですか。ちなみにレベルは?」
「100、人類において、最大のレベル。100だ。」
人類最強が、lv100。そう聞いたレイフィムは、つい笑ってしまった。
「ンフ……いえ失礼。そうですか、100。あーそうですカ。」
「何がおかしいっ!」
lv100、僅か半分程度だ。確かに、ワールドがワールドなら強い部類に入る。lv100でも50人集まればレイドもこなせるだろう。しかし、人類最強と言うのにはあまりにも低い。ふむふむと考えて、胸からベルを取り出す。
「冷めましタ。あなた方に危害を加えるつもりは有りませんし、戦うつもりもありませン。何か聞きたい事があればこちらのベルで私を呼び出して下さい。」
それでは!と言い残し、煙幕を投げる。
煙が晴れた時には既に、レイフィムは消え去っていた。
「どう言う……事だ?」
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「成程、この国最高のレベルで100か。うーんなるほど。それが本当なら、非常に面白く無い」
ゲーム中レイフィムは、最強を目指していた。有る程度の装備、他のプレイヤーを凌駕するプレイ時間。そして課金できるほどの金。それは、一人暮らしで家族から見做された彼だからこそ出来たプレイング。それによって得られた結果は【ソロ最強の10位】という肩書きだった。
「最強、ですか。」
何かに於いて1位になりたいという願いは、ソロ最強という異名を持って成し遂げられた。しかしそれでも、レイフィムはランキング1位を目指し続けた。自分よりも強い、先をいくプレイヤー達に憧れを抱きながら。
「ふう、そうか。そうなると、プレイヤーもいないのかね。もしくは他のワールドにいるのか。」
思わず素に戻る。脳裏に浮かんだのは、アルバム先駆さんの言葉だった。「最強って、結構つまんないもんだよ。」と言っていたのを思い出す。
「まあ良いか。この世界をゆっくりと見て回るのも、悪くない。」
また1人で旅をして、道化師ロールプレイするのも悪くはないだろう。そんな事を考えてふと気づく。
「そういえば、マイルーム。今どうなってるんだ?」
マイルーム、それはプレイヤー各自が保有できる専用サーバー。金額に応じて土地を購入し、その気になればテーマパークを作ることも可能。ソロ活動で無駄に有り余った資金を、レイフィムはここに注ぎ込んでいた。
「ゲート、オープン。」
亀裂が走り、マイルームへと続くであろうゲートが開いた。
「やる事ないし、マイルームに引きこもって色々考えるか。」




