最初で最後のPT戦
MMORPG、ノゥヴァズゼード。一世を風靡したVRMMORPGゲーム。数千を超えるアイテムの種類と、数百を超えるボスモンスター。32種類のワールドを探索し、その全てのワールドボスを討伐する事が目的。そして今、最後のワールドボス【支配の魔神 アーツ・ベリス】との決着が着こうとしていた。
城にも匹敵するその巨大な体、まさしく異形の者としか形容できない化け物。アーツ・ベリスの最終形態だ。この状態に成れば、物理魔法その為状態異常に対して異常なまでの防御力を得る。
「ふう、全く。ラスボスだからって、まさかこんな縛りがあるとは。ワン」
総合戦闘力ランキング第1位、アルバム先駆さん。白い犬の様な外見をした武士であり、少数先鋭クラン【嗚呼亡骸達よ】のリーダー。またの名を『武士王のアルバム先駆』そう嘯く。
「参加者はランキング上位10名のみ。討伐成功時には、全てのプレイヤーはアイテムを引き継ぎなざら新たな世界での冒険が待っている。ってテキストに出てましたね。」
【嗚呼亡骸達よ】副リーダーにしてランキング8位、縁日怪談さん。エリート・リビングデッドにして、最高強度のタンク。
「お陰で私みたいな道化師も、参加せざるおえないなんてネ。」
ランキング10位、道化師レイフィム。クランに所属せずたった一人でワールドボスを打ち倒したことから『クラウン・ヘッド』の異名を持つ、唯一の道化師。
「おれレイフィムさんの戦闘初めて見たっす!」
ランキング9位、ゴリラ・ドリルさん。クラン【幻獣動物園】のリーダーであり、一撃の火力で言えば他を凌駕する最強の武器を所持する。
「じゃあ、ここからは!アルバム先駆さん!お願いします!」
「任せろ!ワン!」
縁日怪談の声により、アルバム先駆は泥の様に変化したアーツ・ベリスへと最初の一撃を仕掛ける。
「専用武具スキル発動!『乱世・六七八剣煙・斬』!」
専用武具スキル。それは、ワールドボスにトドメを刺した者のみが手に入る武具専用のスキル。アルバム先駆の持つそれは、一定時間内全ての耐性や特殊防御を無効化し行動を不能にする最強の剣。
「支援するぜ『クラッシュ&ゼロ』」
「我が声に従い、全ての死者は喝采せよ。『死者たちの喝采』」
戦闘時に一度しか使えない専用武具スキルを、一斉に使用していく。上位10名、その全てが専用武具を持っているからこそ連撃。
「はぁぁあ!!!『決戦魔法-速殺波動砲-』」
「虚無より顕れ顕現し、全てを飲み尽くせ!『虚空より来る大口』」
「ワイの力を見るがいい!『狂乱の祭囃子』」
「っしゃ『オーバー・ボム』」
「見せたるわ。『月鯨の迎撃』」
口々に放たれるその全ての攻撃が、最前線を支えてきたトッププレイヤー達の最強のスキル。
魑魅魍魎が跋扈し攻撃を重ねて、空から降り注ぐ光と空間が割れて現れた大きな口。そして魔道銃から放たれる砲撃が、アーツ・ベリスのHPを見る見るうちに減らしていく。
「もう一撃『特大剣撃・阿修羅残』ワン!!」
このメンバーで専用武具を2種類持つのは、アルバム先駆ただ1人。そして、トドメは当初から決めていた様にレイフィムへと授けられた。
「ではっ!!削り切って見せましょう!!『一人芝居のサーカス団』」
道化師の被った仮面が光り輝き、煙幕と共に6人の使い魔が現れる。それらは次々に練撃を仕掛けていき、HPはのこり数ミリ。
「「「「パレード・オブ・デス」」」」」
専用スキル『一人芝居のサーカス団』の効果は使い魔を召喚し、トドメに専用攻撃スキルを発動するという総合ダメージで言えば最強クラスのぶっ壊れ武器。
【グォオォォオオォオ!!!!!!】
ついに、最後のワールドボスであるアーツ・ベリスを倒した。
同時に、ドロップアイテムがレイフィムの元へと降りてくる。
「「「よっしゃぁぁぁああぁ!!!!」」」
「傀儡の大鎌、専用武具のドロップを確認しました。みなさん、ありがとうございまス。」
「いやいや、良いってことよ。俺2本あるしな、10位なんだからもっと頑張れって意味でよ。ワン」
「ま、運が良かったってことで。」
ゆっくりとお辞儀をすると、周囲のプレイヤー達が光に包まれていく。
ワールドボスを倒し、遂に現存する全てのボスを討伐した。これによりワールドはステータスとアイテムを所持したままリセットされ、もう一度ストーリーは振り出しに戻る。いわゆる、強くてニューゲームだ。
「随分とかかりましたねえ、まだ1週目なのに。」
ランキング4位に君臨した【wen wen56】。支援術式の専用武具でバフを貼りまくった、魔人族。
「運営的には3周くらいしてもらう予定って、インタビュー記事に書いてあったぜ?」
6位【ドラ5〜☆】。アーツ戦序盤はボスの攻撃を一手に引き受け続けた最強の盾の持ち主であり、人族。
「アプデもあるだろうし、またこれから楽しくなりそうね!」
4位【イン・グレ氏】回復専用武具を使用した最強のヒーラー。獣人族。
「こうして大人数の戦闘も、楽しいもんですネ。」
10位【レイフィムさん】ソロプレイヤーにして、1人道化師の団長。他のプレイヤーと違い、クランに所属していない。ジュエリーピエロ。
「初対面の奴もいるのに、なかなか良い連携だったな。」
2位【エルフ&エロース】最多人数のクラン【ハイエルフィア】のリーダーであり、エルフ族。
10人の最強のプレイヤー達が、その場に集まるのは壮観だった。記念ということで、スクリーンショットを撮る。
「じゃあ、みんな。また会おう」
アルバム先駆の言葉と共に、光は…全てのプレイヤーを包み込んだ。
__________
「おっ、リスポーン地点はやっぱりここですカ。」
ケンケン神殿、ゲームを初めて最初に訪れるリスポーン場所。遺跡のような内部は、白く透き通った水晶で作られており、ロビーと呼ぶ人も居る。ここは共有サーバーの外に位置しているマップ。つまるところ、誰もいない。
「あれ…?メイン…メニューが…」
視界の端に常に表示されていた歯車のマークが、無い。本来であればそこをタップしてメニューが開ける筈なんだが。
「……?」
パチンと指を鳴らしてもインベントリが開かない。
「なんでだ………?………外に出て…確認するか。」
水晶でできた神殿の出口、そこに向かおうと立った瞬間…違和感に気づく。
「風…?このゲーム風を感じる触覚なんてあったか?ラスボス倒した特典とか?」
疑問が尽きない、むしろ変な汗までかきそうだ。足を早めて、その白い扉を両手で押しこむ。通常ならここで光に包まれて、共有サーバーの最初の街【エルゴラ】へと飛ばされる筈…。
「なん…だ?」
しかし、開くと同時に見えたのは陽の光。あり得ない、この扉の向こうには何もなかった筈だと脳が理解を拒否する。
「森の中…!?ど、どういう事だ?これは一体………疲れてんのか!?バグか?そうだ!ログアウトだ!」
バグが起きていると考え、ログアウトのボタンを必死に探すがどこにも存在しない。もしかしたらメニューが表示されないバグだろうかと考え、緊急時に使用できるシステムを起動しようと空中に○○○と指で書く。しかし、何も表示されない。
「はぁ…なんなんだ?ってか…暑い…暑さ…?暑さなんてあったかこのゲームに?」
思考を巡らせて、理解する。周囲の枝に触れて、折る。パキッと音が鳴り、そのまま地面に落下する枝。おかしい。通常なら光になって消えるだけだ。
「まさかこれは…現実なのか?」
趣味で描いていたものをこちらにも投稿してみてます。




