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破壊神の終末救世記  作者: シマフジ英
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03 誓う復讐(ルーツ視点)

 俺が編入したのは帝国士官アカデミーの最終学年だった。あまり授業というものは残っておらず、実地訓練が多い。この日は、クラスメイトと共に魔物退治に出ていた。いくつかの班に分かれており、俺はジャックとリリィ、そしてもう一人の男子生徒と一緒だ。


「君も反帝国同盟に?」

 俺は思わず声を上げる。男子生徒に対してだ。


「ああ。僕の国もまた帝国に滅ぼされた。独立と再建のため、戦いたいと思ってる」

 その(こころざし)は立派だ。一緒に魔物退治をしていても誠実さを感じる。しかし、おかしい。


 いくらなんでも、クラス内に反帝国同盟派が多すぎるのだ。そもそもこのクラスは外国人ばかりいる。純粋な帝国人はブルーニーとその取り巻きぐらいしかいない。


「なぁ、ジャック、リリィ。偶然にしては出来すぎだ」

「ああ、正直、反帝国同盟に組みする可能性の高い者が集められているのがこのクラスなんだと思う」

「組みするのなら一斉排除。それを狙っている、ってことかもしれないわ」

 二人の言うことはもっともだ。しかし、このあからさまぶりはそれだけではない気もする。


「マークされているかもしれないけど、次のミタインズ地方奪還作戦は止められない」

「それは俺とリリィも同じ気持ちだぜ」

「ようやくサナ王女を助け出せるんだもんね。ルーツだって、ようやく会えるじゃない」

「そう、だな……」

 帝国側にどんな裏があるにせよ、この作戦はもはや止められない。罠が待っているのなら、受けて立つしかない。俺はそう思った。


「3人とも、雑談はそこまでだ! 魔物がいるぞ!」

 男子生徒の声に目を向けると、そこにはアンデッドウルフの群れがいた。魔力で身体の腐った、邪悪な魔物だ。リリィの魔法、ジャックの槍術、男子生徒の剣術がアンデッドウルフたちを次々と撃破していく。


「俺も負けてられないか」

 彼らの連携を乱さないように注意しつつ、俺も剣を振るってアンデッドウルフの討伐に参加した。


 他の班の魔物討伐も概ね終了し、俺たちは拠点の村に戻った。重要な村というわけではないからか、魔物討伐の依頼に正式な兵士は来ず、士官アカデミーの訓練の一環とされたようだった。村民からは泣いて喜ばれ、もてなしの誘いを受けたが、アカデミーに戻らなければならないので、断って全員で帰路についた。


「ルーツはさ、あの村民たちを見て、どう思う?」

 不意にリリィから話しかけられた。


「どう思うって、ずいぶん漠然とした質問だな?」

「あの人たちも帝国民ってことよ。つまり、私たちはあの人たちにも牙をむこうとしている」

「そういうことか。俺は割り切っているよ。あの人たちは一般人だ。ミストロア王国を滅ぼした件とは確実に無関係だし、憎む必要もない。だけど、俺の反帝国の想いは変わらない。もちろん、あの人たちは関わって来てほしくはないけどね」

「そっか……」

 リリィは控えめに微笑んだ。


「ルーツ、そこまで考えがまとまってるんだな」

「3年、色々考えて来たからな……」

 ジャックとも会話を交わす。聞けば、ジャックもほぼ俺と同じことを言った。もちろん、それがジャックの本心そのものであるかは分からない。偉そうなことを言った俺だって、隠していることはあるのだから。



    ◇



 実地訓練の翌日、士官アカデミーの生徒は予備兵として、帝国の行事に参加した。年に一度の皇帝からの兵士たちへの激励行事らしい。首都プリドーアムの大通りに多くの兵士と予備兵が並び、宮殿の一角に皇帝が姿を現した。


 仰々しい声で、皇帝は兵士への訓示を始めた。


 皇帝を視認し、声を聞いたことで、俺の中にドス黒い感情が溢れ出て止まらなくなる。


 皇帝ドゥルナス。貴様も俺の敵の一人だ。()()()()()()()()()()()()()()()、知っているぞ。


 必ず復讐してやる。貴様らは、俺の……。みんなの(かたき)なのだから。

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