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転生1話・いるもの、いらないもの

 目を覚ますと、そこには何もなかった。

 床も、天井も、上も、下も、真っ白で何もなかった。

 うち、死んだよね? 確かに死んだはずだよね?

 目の前に手をかざす。ほんのり透けて、ほんのり光っている。明らかにこの世のものではない。

『気が付いたか、竹丘彼方たけおか かなたよ』

 頭に直接響くような声がした。いつの間にか、前に人型のナニカが立っていた。

 頭らしき場所に、目っぽいものはあるけれど、鼻と口がない。そして全身周囲と同じく真っ白で、輪郭がぼやけている。

「……神様、かな?」

『貴様等下次元の者にとってはそうかもしれないな。

 竹丘彼方、貴様の生前の『混沌』処分における功績を称え、転生先を好きに選べる権利を授ける事となった。条件も細かく指定できる、さあ、選べ』

 妙に傲慢な態度に多少イラッと来たが、転生、ふむ、転生か。そんなものが実在し、自分にチャンスが回って来るとは、思ってもみないサプライズだ。

「じゃあ、また同じ町に生まれる事って――」

『それは不可能だ。再び同じ世界に生まれるには最低五十年の間隔が必要と決められている。また、貴様に許されているのは前回と同次元かそれ以下の次元の世界のみだ。我々の場所へ上がる事も出来ない』

「融通利くみたいに言っといて、何それ……」

『人間に与えるにしては最高の待遇を用意しているのだぞ』

 超イラっとするけど、逆らえないっぽいしなぁ。手足を動かしても、進めている感覚が一切ない。この場から動けない。どの場にいるかもわからないが。

 逃げるも殴るも出来ないので、仕方なく『転生先』とやらについて考えてみる。

「そうだなぁ……魔法があって、ドラゴンがいて、みたいなファンタジーな世界、あるかな? そこで囚われのお姫様を助ける冒険なんかしてみたいなぁ。

 あ、恋愛はいらないからね! 絶対にいらないからね!」

『ふむ……ならば丁度良い世界がある。確認するが、本当に恋愛沙汰はいらないのだな? 今なら王子に見初められ自らが一国の姫となる事も出来るぞ?』

「いや、マジでいらないんで。もう永遠の愛を誓った人がいるんで」

『そうか。

 そこに見えるのが貴様の転生先だ。触れるが良い』

 真っ白だった空間に丸い穴が現れ、西洋の牧歌的な町並みが映し出された。

 手を伸ばし触れると、体が穴に吸い込まれていく。

 ……生まれ変わっても、絶対忘れないよ、コト。

 恋人の名を呟いて、目を閉じ、うちは再び新しい命となった――。

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