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宿

 ギルドに戻る頃にはすでに日が暮れて町の至る所でランタンにあかりが灯って夜の活気が出てきていた。

 中に入ると併設されている酒場のテーブルで酒を飲みながらその日の報酬を分けている冒険者が結構いた。


 俺はそれを入り口から羨ましそうに見たが、すぐに気を取り直して朝クエストを受けたカウンターに向かった。

「こんばんは、クエスト終わりました。確認お願いします」

「えぇ!もう終わったのですか⁉︎」

 冒険者プレートを出しながら、昨日から俺の対応をしてくれているギルド職員にクエスト報告すると、その人は目を丸くしてかなり大きい声量でそう言った。

 そして俺にかろうじて聞こえてきた言葉は、

「まさか一ヶ月以上だれもやりたがらなくて増え続けたスライムのクエストを一日で終わらせるなんて·····」

 どうやら俺はいつのまにか誰もがやりたがらない、言ってしまえば面倒くさくて放置されたクエストを受けさせられていたようだ。

 スライムは物理的に倒そうとすると汚れたりするので当然と言えば当然なのだが。本来なら魔法を使える人がやったりするのだろう。

 それに俺のようにソロの人間しかスライムを狩ろうとはしない。


「あのクエストは受ける冒険者がいなくて、日に日に討伐数と報酬が増え続けていたので助かりました。ありがとうございます」

 俺の顔を見て先ほどの呟きが聞こえていたことに気がついたのか、苦笑いしながらそんな事を言った。

「そうなんですか。それで報酬をもらいたいのですが」

 俺は疲れ果てていて早く安心して休める場所に行きたかったので報酬を貰おうとすると職員は「少々お待ち下さい」と言って奥に歩いて行った。ちなみにその間、クロは冒険者達から可愛がられて食べ物をもらったりしていた。


 しばらく待っていると職員が戻ってきてカウンターの上に小さな袋を置いた。

「この袋の中に報酬の銀貨7枚が入ってますよ。あと二つ目の報酬の宿の鍵もこちらに入ってます」

「あの、その宿ってどこの宿なんですか?」

 宿の名前などが書かれていなかった気がするので聞いてみると、どうやら書くのを忘れていたらしい。

「宿はギルドが経営している隣の建物です。三階の一番値段が高い部屋ですよ。なんと水の魔法石を使ったシャワー付きです。宿泊期間は二泊三日ですね」

 シャワー付きというのはとてもありがたかった。俺もクロもかなり汚れているからだ。


「ありがとうございます!クロ行くよ!」

 初めてのクエスト達成報酬という事もあり嬉しさもありカウンターから袋を取ってギルドを出てすぐ隣の建物に入って階段を駆け上がった。


 途中部屋の番号を聞いていないことに気がついたがそのまま三階に着くと部屋は一部屋だけだった。

 部屋は入り口から見ただけでもかなり広くそして綺麗だった。

 入り口のすぐ横にシャワー室があるみたいなので部屋を汚さないためにそのままシャワー室に入る。

 

 するとクロが我関せずといった態度で部屋の奥に行こうとするので慌てて呼ぶ。

「おいクロ〜。シャワーで汚れ落とすからおいで」

 するとクロはこちらを見たまま固まってしばらくしてから渋々と言った様子でこっちに向かってきた。


 そのままシャワー室に入るのかと思えば扉を押して閉めようとする。

「猫が水が苦手なのはわかるけど我慢してくれ」

 と言って抱き抱えてシャワー室に入る。


 シャワーヘッドに魔力を流すと、それに魔石が反応して水が流れる。そのままクロにかけようとするといつの間にか部屋の角に縮こまっていた。

 仕方がないので再び抱き抱えて水をかけると、

「にゃーーーーっ!!!」

 と建物中にクロの悲鳴が響き渡った。しかし、最後には諦めて大人しく洗われていた。


 途中クロの声に驚いた宿の従業員がきたが濡れたクロを見ると納得して微笑みながら降りていった。


 洗い終わってタオルで拭き終わるとクロはこちらには見向きもせず奥のベッドの上ですぐに寝た。完全に拗ねていた。

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