表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/17

スライム

「やります!やらせてください!」

 俺はそのクエストを依頼書を確認することなく即決で受けることにした。


 即決した理由は目標がスライムだったからだ。スライムは攻撃力は低く、動きもそこまで動きも速くないから初心者などの訓練用として広く認知されていたからだ。


「承知しました。では、手続きに移ります。冒険者プレートを出してください」

 ギルド職員はそう言いながらカウンターの上に長方形の黒い板を置いた。

 板には2つの白い円がありそれが一本の太い線で繋がっていた。


 その片方の円に職員が依頼書を置き、もう片方に俺の冒険者プレートを置いた。

「ではこの板に魔力を流してみてください」


 特に説明の無いまま言われた通りに板に触れて魔力を流し込む。

 すると2つの円が光を放った。予想外の出来事と眩しさに思わず目を瞑る。

 光ったのは一瞬だったが板の上に置かれていた物が明らかに変化していた。

 依頼書に書かれていたはずの文字が、最初から白紙だったかのように文字が消えていたのだ。


「これは依頼を受注するために使う魔道具です。冒険者プレートを見れば依頼内容を確認できます。はじめての方は皆さん驚きますよ。」

 俺がいつまでも面食らっているとギルド職員は笑顔でそう言った。


「そ、そうなんですか。ありがとうございます。これで手続きは終わりですか?」

「はい、頑張ってください!なんせこのクエストは報酬に宿の宿泊まで付いているのですから」


 それを聞いて再び俺は驚いた。それと同時に久しぶりに屋根のあるところで、さらにベッドで寝る事ができることが嬉しく、再びギルド職員にお礼を言ってやはり依頼内容を確認することなくギルドをそしてスライムを討伐するため町を出た。

 俺はこの時まだ世の中にこんなにうまい話があるはずが無い事をまだ知らなかった。


 ギルドを出る直前に言われた平原に到着するとそこには百匹近くのスライムで埋め尽くされていた。

 俺が慌てて冒険者プレートを取り出し依頼内容を確認する。


 依頼内容は

『依頼 スライム討伐、報酬 銀貨7枚と宿の宿泊、場所 平原、討伐数0/100』

 となっていた。


「ひゃ·····、100って·····」

 あまりの数字に思わず冒険者プレートを落としてしまった。

 慌てて拾うためにしゃがむと、平原についた時まで足元にいたクロが居なくなっていた。


 あたりを見回すと、近くにいた一番小さい30センチ程度のスライムにひたすら猫パンチをしていた。

 俺よりも先に猫であるクロの方が現実を受け止めていたらしい。すこしショックである。

 どうやらテイムした動物は主人と自動的に情報をある程度共有しているらしい。


 スライム基本ほぼ球体で体の中にある核を破壊しなければ倒す事ができない。クロの猫パンチは当然そんな威力はなく、スライムはぷにぷにと跳ね返しながら少しづつ転がされていた。もう遊んでいるようにしか見えない。

「おーい、クロ、危ないぞ」


 何度やっても倒せないことにイラつきはじめたのか今度はこれまでとは違いそれなりのスピードと爪を出してスライムを殴った。

 するとスライムの中にパンチした前足がめり込みスライムの中に入った。


「まずい!スライムの体の中は消化かされるぞ!」

 と慌てて言ったが遅かった。スライムの中に入ったクロの足が少し溶かされたのだ。


「ンニャァァ!」

 と大きな悲鳴を上げてクロが慌てて手を引き抜いて大きく後ろにジャンプした。やはり少し消化されたのか少し毛がなくなって赤くなっていた。


「グルルルッ」

 慌ててかけよって応急処置をしようとすると、クロは怖気ずく事なく全身の毛を逆立てながら少しづつ近づいて行った。

「フニャァァー!」

 と少し可愛らしい鳴き声を上げた方思うと龍が火を吐くようにクロの口から、正確にはクロの口のすぐ前に現れた魔法陣から火を吹き出したのだ。

 

 現実離れした光景にその場で立ち尽くしていると、火を出し尽くしたのか魔法陣が消えた。

 先程クロに怪我をさせたスライムの方を見ると完全に燃やされたのか核すらも残っていなかった。


 突然足に軽い衝撃を感じて我に帰るとクロがいつのまにか戻ってきていて俺の足に頭を擦り付けていた。

「そ、そうだ、ケガ」

 慌てて抱き上げて確認するとどこにもスライムに消化されかけた傷はなかった。


 ふと思いつき冒険者プレートを取り出して魔力を流し込む。

 すると予想通り俺のステータスの横にクロのステータスが小さくだが追加されていた。

 特に何かをしたわけではないので多分テイムの影響だろう。


 クロのステータスを確認しようとすると、俺のステータスが縮小して今度はクロのステータスが拡大した。

『名前クロ、種族ネコ、レベル1、筋力5、魔力50、体力10、敏捷20、スキル 高速再生、火炎魔法、×××・・・・・』


「なんだよ、これ」

 そのステータスは明らかに異様だった。

 魔力の量もそうだが、スキルを複数持っている事や火炎魔法の後のスキルが全て文字化けしているのか見る事ができなかったのだ。


 クロを見ると喉を鳴らして大人しく俺に抱かれながら俺の顔を見つめていた。

「もしかしたら俺はとんでもない猫をテイムしまったかも知らないな」


 一応ギルドなどに報告するべきかなのか悩んでいるとクロはいつの間にか眠ってしまっていた。

 単純に眠かったのか魔力を使った影響なのかはわからないが気持ちよさそうに眠っている。

 その寝顔を見ているとやっぱり普通のネコのように見えてきて驚きや恐怖心などは全くなくなっていた。

 ギルドなどに報告すればクロと俺は離れることになるかもしれない。その可能性を考えるとギルドに連れて行くという考えも無くなっていた。

 わずかな時間だがクロは既に家族に近い存在になっていたからだ。


 すぐに切り替えてクロは眠ってしまったがクエストを進めなければならないので、クロは持っていた敷物の上に下ろす。起きるかとも思ったがそんな事はなくぐっすり眠っていた。

 

 カバンから一本のナイフを取り出す。刃渡り20センチほどのナイフを抜きながら一体のスライムに近づく。

 ナイフには魔法陣が刻印されていた。

 それを起動するために魔力を流しながら詠唱を開始する。

 本来魔法は詠唱をしなければ使う事ができないのに、当然詠唱などできるはずのないクロが使っていたのを見るともしかしたら裏技のような物があるのかもしれない。

 

 物に刻印された魔法は本来より威力や射程は落ちるが初めから魔法陣があるので詠唱から発動までの時間が大幅に短縮される。


 スライムに3メートルまで近づいて詠唱も終わるとナイフの魔法陣が輝き、ナイフ自体を光で包み込んだ。

 その場でナイフを振りかぶり魔法名を言いながら振り下ろす。

「ウィンドブレイド!」

 とたん不可視の刃にスライムが核ごと両断されて消滅した。


 俺が魔力を全て使い果たしながらも日が沈む直前になんとか99体のスライムを倒したのとクロが起きたのはほぼ同時だった。

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ