魔銃
光が徐々に薄まっていきゆっくり目を開けるとそこはさっきまでいた町の外壁が見えるひらけた場所ではなく大量の瓦礫が散乱している場所だった。その瓦礫には今まで見たことのない装飾が施されていた。
「ここは?もしかして魔族の町か?」
「元ね。だいぶ前に攻め落とされてそのまま放置された町よ」
俺の質問に答えてくれたはエリザベートだ。
なんとなくクロが答えてくれると思っていたがいつのまにか猫の姿に戻っていた。戦闘で魔力を消費したせいなのだろう。
「攻め落とされたってことはここはまだ人間の国なんだよな。どうして一気に魔族の国にテレポートしなかったんだ?」
「結界が張ってあるんですよ」
「そういうことよ。国内に直接テレポートしようとしたら強制的に行き先を変えられるようになってるの。そうでもしないと人間の密偵が入り放題だし暗殺される可能性もあるしね。人間側にも同じものがあるはずよ」
今度はバトラーとエリザベートがすぐに答えてくれた。バトラーはテレポートで魔力が切れたのか地面に座り込んでいた。
「そうなんだ。全然知らなかったなー。ちなみに行き先ってどこに変えられるんだ?」
今度は少し間が空いた。エリザベートもバトラー知らないのか考えている。
「基本的にはランダムで変えられるようににゃってるよ。行き先の共通点といえばほぼかにゃらず死ぬようなところかにゃ。例えば火口の上とか直接のマグマのにゃかとか海溝の底とか」
クロが多分質問に答えるためだけに人の姿に戻って答えてくれた。
「にゃ」になっているところを頭の中で「な」に直しながら書いていると理解するのに少し時間がかかってしまった。
「えー。何もそこまでしなくても」
「そこまでやらにゃいといけにゃいんだよ。テレポートを使えるってだけで魔法職としては超一流にゃんだもの。」
まぁたしかにそのレベルの人が簡単に入ってきたら暗殺や密偵なんてやりたい放題かもそれない。
「けど知らないでやった人は少しかわいそうだな」
「それに関しては事前にそういう結界があることは告知してるから。それにあっちも似た結界張ってあるし。だからやってくる人はいにゃいよ」
そう言って再び猫の姿に戻って適当なところで丸くなった。
「そういえばさっきクロが渡したやつ使ってみてよ」
「たしかに気になりますね」
俺も休もうと腰を下ろそうとするとエリザベートとバトラーが言ってきた。
「え?まぁいいけど俺もちゃんとした使い方は知らないんだよ」
中腰のまま答えて、ちゃんと立ち上がってベルトに挟んでいた銀色の魔法式拳銃を取り出した。
「たしか引き金を引いたら筒から鉄が出てくるって言ってたっけ。そしたら持つ場所はここで、これが引き金かな」
とりあえず壁に向けて引き金に指を掛けてみると突然中にある筒を中心にしたと思われる赤い魔法陣が出現した。
「今、あんた詠唱してなかったわよね。詠唱無しで魔法使えたの」
エリザベートが意外そうに聞いてきたが慌てて首を振った。
「使えないよ。引き金って言う場所に指を掛けたら勝手に魔力が吸収されてできたんだよ。魔道具屋の店主が魔法が使えなくても魔力さえあれば使えるってのはこう言うことなのか。多分エリーが持っても同じ事が起こると思うよ」
「そうなんだ。少し面白そうね。あと、あんたがエリーって呼ぶな!」
エリザベートの怒鳴り声を軽く無視して前を向いて壁に狙いを定めて引き金を引いた。
すると凄まじい轟音と衝撃で思わず尻餅をついてしまった。
「いてて」
尻をさすりながら立ち上がって壁を見てみると狙っていた場所よりずれていたがそれなりに厚い壁に小さな穴が空いて、そのまま先の壁にまで貫通はしていないが深く穿っていた。
「これは、なかなかすごいわね」
「はい、私の目では何が起きたかほとんど見えませんでした」
「引き金を引いた瞬間に魔法が起動したのとほぼ同時に中から先端が丸くて長い鉄がすごいスピードで飛び出して行って壁に穴を開けたのよ」
「なるほど。これは大勢人間が同じものを持って攻めてくると大変なことになりますね」
「ええ、並大抵の奴らじゃ避けられないし防げもしないで殺されるでしょうね」
魔法式拳銃の威力を見てエリザベートとバトラーが真剣な顔で話し合っていた。
「まだ幹部クラスの人達にしか渡されていないって魔道具屋の店主に聞いたよ」
エリザベートとバトラーに近づきながら声をかけると2人とも少しほっとしたようだった
「それなら私と近い実力の連中が相手にすれば大丈夫かもね。レイジ、城についたら少しその魔法式拳銃だっけ?長いから魔銃って略すわね。それ調べさせて」
「うん。いいよ」
「ありがと、じゃあさっさと移動しましょう」
そう言ってエリザベートは歩き出したので休んでいたクロとバトラーも立ち上がって歩き出した。