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逃走3

 振り下ろされた聖剣は俺の首に触れる寸前に止まり軌道を変えて、勇者はクロの飛ばされていった方向と自分の間に聖剣を横にして構えた。


 それとほぼ同時に金属が溶解した時の様な赤い一本の細い熱線が聖剣に直撃した。魔法を切ったり威力を削ぐことのできる聖剣があまりの高温で当たった箇所が一瞬赤くなっていた。


 火炎魔法の中でも最上位に近い魔法だった。普通の剣や防具だったら一瞬で溶かされていたかもしれないが、勇者は防いでいた聖剣が一瞬熱で赤くなったのと防ぎきれなかった熱で鎧の下の服が焼けたていどだった。


 勇者は聖剣から熱が引いたのを確かめると俺を横目で見てクロのいるであろう方向に向かっていった。

「俺はいつでも殺せるから一旦後回しにされたのか?」


 呆然と勇者が行った方向を見ながら呟くと今度は頭の中に声がした。

「レイジ聞こえてる?頑張って時間稼ぐからこの町から出て魔族の子が2人待ってるはずだから合流するんだ!すぐに巻いて追いつくから」

「わかった!死ぬなよ!絶対追いついてこい!」

 すぐにクロがいるであろう方向に叫び返した直後、そこからかなり離れた方向で50メートル近くの火柱が上がったかと思うと今度は周辺が氷に覆われたり、ほぼ横向きの竜巻きが起こったりと天変地異の様相だった。


 それを見て勇者がすでに俺からクロに一旦ターゲットを変えて離れていったのがわかった。

 俺は気力を振り絞って立ち上がり、切り落とされた左手も拾って切断面に合わせると再生が始まった。


 今度は爆発が起こって巻き添えで死人が出そうだと思ったが周りに全く人の気配がしないことに気がついた。楽観的に考えると俺とクロがギルドに移動するまでの間にすでに避難が始まったいたのかもしれない。そうであって欲しいと思う。


 そのままクロの魔法で起こる天変地異を遠巻きに見ながら町の外に向かって走っていると目の前に突然少女が現れた。

 それに慌てて止まり、すぐに全力で後ろに下がった。


 本能的にこの人物はやばいと思った。見た目は普通の少女で長い金髪をツインテールで結び、容姿もかなり整っていて綺麗な赤眼が印象的だが、何故かわからないが生物として格上だと確信して恐怖を感じた。

 二回勇者に殺されそうになった時以上に自分が恐怖していることがわかった。

「ふーん、あんたがあの人の。あんまそんな風には見えないけど」

 少女は俺を値踏みするような視線を向けながらそう言って名乗った。

「あー、自己紹介忘れてたわね。あたしの名前はエリ·····」

 少女が最後まで言うまでに俺はさらに下がって皮膚だけは繋がった腕から手を離して昨日買いに行きクロに魔法陣を刻印した投げナイフをさらに走りながら詠唱したまま待機させていた別の魔法を付与して投げた。


 二つの魔法の操作も昨日クロから教わった技術だ。正確には片方は維持しているだけだが今回はそれで十分だった。

 投げたナイフは両端から勢いよく火を噴き出しそれを推進力にして、さらに一本ずつ出力の調整をして軌道を正面の少女に向かって全く別々の方向から同時に当たるように調整した。


「まったく、力の差も理解できないなんてがっかりよ」

 その間、少女はその一言だけ言って衝撃の行動に出た。

 少女は自らの親指を浅く噛み切って血を出した。そこから傷ほ深さからはありえないほどの量の血が吹き出してひとつにまとまり始めた。そして最終的には一本の細い剣の形になった。

 そしてその剣で俺が投げた投げナイフをいとも簡単に払う。


 しかし、俺も防がれることは当然予想していた。血の剣がナイフに触れた瞬間に別でかけていた魔法が発動してそれぞれが爆発を起こし少女の周りを黒煙が覆った。

「ブースト!」

 それと同時に身体能力を強化して屋根から飛び降りてすぐに狭い路地に入ろうとして後ろから押し倒されて押さえつけられた。


「色々考えたようだけどこのあたしから逃げられるはずないでしょ?あたしの名前はエリザベート。吸血鬼の始祖にして魔族で二番目の強さをもってるのよ」

 吸血鬼は人間の血を吸って生きる。俺のやばいという予感はあながち間違ってなかったらしい。

「じゃあ君がクロが言ってた魔族の子なのか?」

「そうよ。全く手間かけさせるんじゃないわよ」

そう言ってエリザベートと名乗った少女は俺を担ぎ上げて町の外に向かって走り始めた。

 俺が遅いのはわかるが今日はよく女の子に担がれている気がする。


「揺れるからって舌噛んで死んだりしないでよ。べ、別に気遣いとかで言ってるんじゃないんだからね!あんたに死なれると·····クロに怒られるだから!」

「わかった。しっかり口閉じとくから。心配ありがとう」

「だから!心配してるわけじゃないわよ!」


 なんか会った時はやばそうな人だと思ったが話してみるとそういう訳ではないみたいだ。さっき一瞬クロの名前が言えなかったのはもしかしたら魔王のときの名前を言いそうになったからかもしれない。状況が落ち着いたら今度聞いてみよう。


 そんな呑気なことを考えてると、クロが戦っているはずの場所から再び爆発が起こった。

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