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逃走2

「あの子が私を猫にした勇者だよ!」

 ギルドから飛び出すとクロは向かいにある建物の上に一気に飛び乗りながら説明した。

 二階建てで決して低くない高さだったがあっさり飛び乗れてしまう辺りやはり魔族は人間とは身体能力の次元が違うと言われてるのは本当なのかもしれない。

 クロから見て後ろ向きに担がれてるおかげで、窓や出入り口から漏れ出ている黒い煙の中から勇者が飛び出してくるのが見えた。

「クロ!その勇者が出てきたぞ」

「うそ!方向感覚が狂うようにしておいたのに」


 クロは俺の報告を受けるとそのまま確認せずに町の外へ出るための最短ルートを走り出した。

 勇者もそれに気付いて、これまた勇者も一気に屋根の上に飛び乗ってクロとほとんど同じスピードで追いかけてきた。

「魔法でなんとかできないのか?」

「今思い出したんだけど勇者の聖剣って魔法を斬れるんだった!」

 生還の衝撃の能力に唖然としてしまった。しかしそれならクロが負けてしまったのも納得できるかもしれない。

「正確には初級レベルの魔法は魔法ごと斬れてるけどそれ以上は魔法陣しか切れにゃい。威力は削げるけどね。まぁどのみち接近されたらほぼおしまいだよ」

 それは本当にやばいかもしれない。なんとかクロを援護できないかと考えているとあることを思いついて試してみる。

「マイン!」

 屋根の内側に魔法陣を出現させてそのまま通り過ぎる。そのまま魔法陣を維持して勇者がその真上を通ったのと同時に魔法が発動した。

 勇者の足元で爆発が起こったが勇者は少し驚いた素振りを見せただけで聖剣で魔法陣ごと斬り威力を弱めた。

 しかし俺の狙いは問題なく達成されていた。


 爆発は勇者の聖剣で威力を弱められたが、その前に勇者の立つ屋根に穴を開けていた。

 そのまま勇者は下の階に落ちていき一気に距離が開くはずだ。

「よしっ!あの家の人には申し訳ないけど上手く行った!」

「にゃるほど、落とし穴みたいにゃもんだね。このまま一気に離れて巻ければいいけど」

 心配になるような事を言ってクロは更に加速してどんどんスピードをあげた。

 まだ全力で走っていたわけじゃないようだ。

 今喋ると下を噛みそうなので声に出しては言えないがこれなら逃げ切れそうだった。


 勇者を落とした場所から30メートル以上離れたと思ったところで勇者が落ちたところから音が聞こえたと思ったら突然クロが倒れ、俺はクロから投げ出され危うく屋根からも落ちそうになった。

 なんとか屋根の真ん中まで戻りクロを見ると右足の太腿を何か小さい物が貫通していったように前と後ろから血が出ていた。

 しかしクロのスキル高速再生ですぐに治りかけている。

「クロ!大丈夫か?今何が起こったんだ!」

「大丈夫。だけど今、私でも何が起こったのかよくわからにゃ·····!」

 駆け寄ろうとした瞬間、突然クロが吹き飛ばされ道を挟んだ反対側の建物の壁を突き破って行った。

「は?」

 正面を見るとクロがいた場所のすぐ後ろに勇者が足を振り上げた状態で立っていた。

「·····速すぎるだろ!」

 クロのところまで行こうにも俺だとその前に追いつかれる。どうするべきか悩んでいると勇者の左手に今朝、魔道具で見かけた魔法式拳銃が握られていた。

 クロの足を貫いたのは間違いなくこれだろう。あの店の店主も幹部クラスには既に支給されていると言っていたし勇者が持っていても何の不思議もない。

「あんな強力な武器二つも持ってるやつとどう戦え場いいんだよ」


 絶望的な状況に思わず愚痴が溢れる。その瞬間勇者の姿が目の前から消えた。

 次の瞬間、背後から凄まじい殺気を感じて前に跳びながら体を捻る。

 勇者は聖剣を上段に構えそのまま振り下ろした。

 ほとんど同時に左腰にある魔法陣の刻まれているナイフを逆手で抜き頭上に構える。しかし、聖剣は何の抵抗もなくナイフごと俺の左腕を切り落とし、そのまま左目も瞼の上から浅く切った。さらにその剣風によって屋根のギリギリまで吹き飛ばされた。

「うあぁぁぁ!」

 その場でうずくまって右手で短くなってしまった腕の先を押さえるが凄まじい勢いで血が流れた。

 左目はすでにスキルで治り始めているが、完治するまでまだ時間がかかりそうだった。

  

 勇者はその場で蹲って動けなくなった俺の横まで来て再び聖剣を持ち上げ、俺の首に狙いを定め振り下ろした。

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