怒り
委員長はそのまま教室へと戻った。これ以上探しに行っても無駄だと悟ったのだろう。彼は戻るや否や、
「誰がやったんだ」
そう放った。今までと違う言葉の圧に逃げ出したはずの委員長に対し場は静まりかえった。
「誰がやったんだって、お前がやったんだろ!」
「違うに決まってるだろ!なんでそんなことをしなきゃいけない」
「お前昔白石に振られたって聞いたし逆恨みだろ」
「前から言ってるが違うって言ってるだろ!そもそも告白なんてしてないししてたとしても今は別に彼女がいる。復讐なんてするわけがない」
彼はここで魅了を発動した。前回と違って無効化されることはなかった。無意識に設定していたリミッターが外れたのだろう。出力が上がっていた。
「お前らの中に本当に犯人はいないのか?いたら手を上げろ」
彼はさらに魅了を強く掛け直し聞いた。しかし手を挙げるものはいなかった。
「そうか、お前らは犯人ではないのか。ならばあいつの言うことは出鱈目だったんだな」
今回の魅了は今までの物とは違う、完全に思考を奪うレベルになっていた。嘘をつかれることはない。委員長も本能で察しているのだろう。
「まあいい。どれだけ善良でいようと、どれだけクラスを良くしようと頑張ろうと人は容易く嘘を信じ、本人のことを信じようとしない。今回がその証拠だ」
「そんな人間に信頼など置けるわけがない」
これでれっきとした化け物の完成だ。