霙時 5
今朝から頭が痛い。なんだか目眩もする。
私は学校をサボって、あの場所に行く。
すると、彼はそこに居た。
頭がズキズキと痛む。
「どうして…学校は?」
私が言えたことじゃないのはわかっていた。でも、聞いてしまう。
「君が来る気がしたから…学校なんて、あんな奴らの場所なんて、行きたくない」
微笑みながら彼は言った。
頭がズキンとする。
「そっか…偶然だね」
そんなわけない。私達だから出来る、運命なんだ。自分でも混乱していた。もう癖になった溜息が曇天にのぼる。
今日は、雪だと天気予報が言っていた。
彼は、いつもと変わらない格好だったから、私には寒そうに映った。
「ねぇ」
「何?」
いつもならすぐ本を読むのに。今日は、違った。彼は、私を見つめる。
「君、いつもと違うでしょう」
「…え?」
頭が割れそうに痛い。ぐらぐらと視界が揺らぐ。
「ちょっと、何?急に。私は、私以外いないでしょ」
「うん…君だ。でも、違うよ。君だけど…。君、そうだ、何の花が好き?」
「は?ちょっと…話を逸らさないで。今は花どころじゃ」
頭が痛いのが少し収まる。目眩も落ち着いた。
「何の花が好き?」
「…胡蝶蘭…」
「へぇ…なんで?」
彼は、何が言いたい?こんなにお喋りだっただろうか?彼は私を見つめたまま動かない。
「胡蝶の夢、だから…」
「胡蝶の夢?君、そんな風に思うの?」
「そう」
頭痛が完全に収まる。なんだったんだろう?彼はどうしたんだろう?
「どうして急に、花なんか…」
「僕が『ひび割れた鏡』だからさ。もう、時間がないよ」
「どういうことなの…」
わからない。急に、私の日常はなくなった。どうして、どうして。
私はただただ恐怖していた。
この疑問が霧散してしまった自分に。