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第8話 固い意志を見せてやる

「山崎さんやばくね?」


今、体育終了後の教室。男子しかいない。この時間は女子がいるときには絶対できない話し合いが出来る時間。俺たちはこの時間のことをエンペラータイムと呼んでいる。

そんななかで加藤が俺に話し掛けた。


「何が?乳が?」

山崎さんのおっぱいはでかい。相当な物だ。

「野田、いきなりソコかよ。俺はほかにも顔とか色々含めてやばいってこと言ってんだよ」

「まあな、正直かわいいよな。凄く」

「そして乳がすげえ」

「結局そこじゃねーかよ!なんで一回否定したんだよ!」

「うっせい!俺は巨乳が好きなんだよ」

「加藤と話すと疲れる・・・でも巨乳は好き!」


そんなことを言いあってたら周りもその話を展開し始めた。

エンペラータイム発動!



クラスは巨乳派と貧乳派とに別れて真剣十代しゃべり場さながらの討論会がはじまった。


「おっきいのはやわらかいんやぞ。揉めるんやぞ」

巨乳派の代表は加藤。補佐として俺がついている。前門の虎、後門の狼と言ったところか。

「ちっちゃいとかわいらしいじゃん。いとおしいじゃん」

貧乳派の代表は水野。補佐は特に無し。前門の猫、後門のかまきりと言ったところか。

水野はうちのクラスの学級委員長。とは言っても男子全員からの悪意のこもった推薦によってむりやり委員長をやってるだけなので優秀な人物とは言えない。


「貧乳のどこがいい?あんな、まな板にグミがついてるだけのようなフォルムのどこがいい?」

我ながらナイスな発言だ。

「ちいさいからこそグミが際立つんだよ!それがいいんだよ」

敵もさるもの、しっかり返してきやがる。

「シルエットを想像してみろ。巨乳なら女だとわかるが貧乳だとそうはいかない、ぱっと見男に見えなくもないじゃないか?ようするにだ、おっぱいと言うのは女性が女性であるためのアイデンティティー・存在理由なんだよ。そのアイデンティティーが欠落してるだけの貧乳の女性などすでに女性ではない。しかし決して男性でもない。女と男との狭間で生きる生物なのだ」

加藤ッッ!それは言いすぎだろ!極論なんてレベルじゃねーぞ!バカかてめーは!

「貧乳の娘はスポーティーでボーイッシュでさわやかな好感をもてるんだ!」

おっと、加藤の発言を無視したー!

「でもこの言葉を知っているか?大は小を兼ねる!」俺も軽〜く攻める。



不毛な言い争いが続くので多数決を採ることにした。負けたほうは勝ったほうの一週間パシリ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あと一人を残して同点という劇的な展開ッッ!

最後の一人は増田!こいつはどっちなんだッッ!さあこいッッ!



「巨より貧より美だ!」


増田はそう言って教室を出ていった。

劇的な最後を見せてくれた。


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