第88話 私は〇〇が好きだ
タイトルは作者の好きな漫画『ヘルシング』から取っていじりました。みんなヘルシングを読もう!
「とりあえずこれだけあればいいんじゃない?」
「そうだね、ありがとね」
どうも野田です。今日は山崎さんとデートです。
修学旅行に着ていく服を山崎さんに見繕ってもらいに来ました。
俺は今ある服でいいと思ってたんだけど母ちゃんと姉ちゃんが
『ダサいからダメ!あんた、中学から着る服変わってないじゃない!ジーパンの一本でもこの機会に買いなさい!』
ってさ。
『香織ちゃんと買いに行けばいいじゃない!あの子センス良さそうだし』
ってさ。
ということで山崎さんを誘って行くことになったんです。
『じゃあ私のも選んでねっ』
『いいけど俺、全部“いいんじゃない”って言うと思うよ?』
ってさ。
そんで今、お買い物が終わったところです。
ジーパンとTシャツ数枚を選んでもらいました。
ありがとうございます。
俺はデートという言葉が好きです。
大好きです。
『諸君、私はデートが好きだ』
この一言で始めて、“少佐”をも超える演説をすることだってできるほどデートが好きだ。
というか山崎さんが好きだ。
自分でも驚くほど好きだ。
不満や文句なんて一ミリたりともない。
でも山崎さんの方はどうなんだろうか?
俺のことをどう思っているんだろうか?
完璧に分かりあっている?
今現在、俺が一番好きな人は間違いなく山崎さんで、山崎さんも当然俺が世界で一番好きなんだと思う………多分。
でも山崎さんも俺に言いたい事あるんじゃなかろうか?
俺に対する不満・疑問!
どうなんだろうか!
「山崎さん!山崎さんはどーなんだい!」
「何が?」
「俺に対して不満とか疑問とか!言ってみて!」
「え〜〜〜何それ?急に言われたって特にないよ」
「いや!あるはずだね!いちいち格好悪いぞこの野郎!とか、眼鏡が似合ってないぞ!とか」
「君は眼鏡かけてないじゃない!」
あ、いちいち格好悪いところは否定しないのね。
「いちいち格好悪いところは不満に思ったことないよっ。そこは野田くんの可愛らしい長所だよっ」
て、照れるじゃないですかっ!
てか心読んだ?
「読んでないよ」
読んでる!
なんかこのくだり前もやったような………そんときは加藤が相手だったけど。
やっぱ俺はサトラレ?
「不満と疑問ジャンジャン言ってください!全部改善しますから!」
「ん〜〜〜やっぱないよ」「きっとあります!山崎さんは俺に遠慮してるだけです!何を言われても俺は山崎さんのことを嫌いになんかなりません!だから不満をぶちまけてください!」
「今日はテンション高いねっ。そーゆー野田くんはどうなの?私に対する不満・疑問は?」
「ないです!」
「えっ!野田くんだけずるい!」
死ぬほど楽しい。
やっぱ二人は完璧に分かりあってるんだ。
『♪山口さんちのツトム君っこのごろ少し変よ〜どうしたのっかナっ♪』
「あっ!電話私だ!」
山崎さんが携帯電話をマナーモードにし忘れるなんて珍しいな。
それにしても山口さんちのツトム君か………可愛いじゃないかよ。
「町田から電話だったんだけどね、今近くにいるから会わないか?って。いいよね?」
「え?………まあ、いいんじゃない?ついでだから夜ご飯一緒に食べようか」
今日デートだってことは町田も知ってるはずだろ?
空気が読めないのか?
それとも冷やかしたいのか?
まあ、いいけどね。
俺と山崎さんは待ち合わせのファミレスに向かった。
手を繋いで。
ホントに不満なんてないんだよな。でもこれから出て来るかも知れんな。
そうなったら全力で改善します。
自分が書いてるもんを客観的に見れてない気がしてならん。