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第86話 余計なことかもしれないけども

こんな人情ドラマ………泣いても知らないんだからねっ

「なあ、前に田中くんが修学旅行嫌いだって言ってたじゃん?」

「おぉ、スガさんが心折れちゃったやつな。それがどうした、野田?」


田中くんがあまりにも修学旅行を全否定するもんだからスガさんが修学旅行について何も言えなくなっちゃったやつだ。

詳しくはちょっと前参照〜


「何でそんなに嫌いなのか知ってるか?」

「知らない。野田は知ってるの?」

「知ってる。だから解決してやろうと思うんだ。修学旅行なんて最高に楽しいイベントはみんなで楽しまなきゃダメだろ!?協力してくれるよな?」

「野田…いつになくナイスガイだな。協力するぞ」

「田中もあまり知られたくない事だろうから俺達二人だけでやろうな」

「何か野田が青春の真っ只中を生きる友情語る奴みたいで若干気持ち悪ぃな」

「うっせい」


俺は早速高橋に田中くんの持つ悩みを教えた。

高橋は実に真剣に聞いてくれた。


田中くんは基本的に俺達とはあまり積極的に喋らない。一緒に遊んだりすることもほとんどない。

田中くんについて知ってることも少ない。

学業に真面目な優等生で、上品なユーモアセンスを持ち、タッチの南ちゃんが好きで、田舎娘にグッとくる銀縁眼鏡の似合うナイスガイってことだけしか知らない。


でもやっぱり大切な友達なんだ。

高橋のその姿を見てよくわかった。

高橋に相談してよかったと思った。




「………そんな理由があったのか…」


高橋はなかなかショックを受けている。


「言い方は悪いけどドラマチックだろ?」

「こんな言い方は悪いけど、なんかベタだな。………母子家庭だったなんてな。母親の負担を減らすために毎日まだ小さい妹と弟の面倒を見て…学校に内緒でバイトもしてるなんて………修学旅行なんか行きたくても行けない状況なのか…そんなに生活が苦しいのか………」

「そうみたいだぞ」

「そんななかであんなに勉強頑張ってたのかよ」

「だからこそ。じゃないのか?」



「「俺達に出来ることを探そう!」」



俺達は田中くんのために考えた。悩んだ。

そして二人で考えた結果、安易だが…安易過ぎるが、田中くんの分の修学旅行のお金を用意すればいいんじゃないか。となった。


お金があれば家を心配しなくていいじゃあないか。

“修学旅行代を受け取ってもらえないかもしれない”

とも思ったが、田中くんは空気の読めない男ではない。

戸惑いつつも受け取ってもらえるはずだ。


『じゃあ出世払いってことでいいかい?』


なんてこと言ってくれるんじゃないかな。

などと色々考えた。


ということで俺達は朝の新聞配達やいらないものを売ったりして修学旅行代を稼いだ。

自分のためにならないことで頑張る。いや、間接的に自分のためになると信じていたのだろう………高橋の頑張りは凄かった。

毎日朝早くから新聞配達をした。ほかにも一ヶ月限定という条件でも雇ってくれるバイトを見つけて働いていた。

いい奴過ぎるぜ…かっこよすぎるぜ………

本当に高橋に相談してよかったと思った。


俺もいらなくなった漫画とかを売ったりした。



そんなかんじで一ヶ月が経った………この間は田中くんにはもちろん、誰にも俺達の活動は教えなかった。

ただ

『修学旅行は最強に楽しいものになると思うぜ』

と、加藤や山崎さんとかには言っておいた。

『やっぱみんな楽しくないとな』

なんて高橋は言っていた。




「田中くんが家に負担がかからないようになるぐらいは稼いだな」

「だな。ほとんど高橋だったけど悪いな」

「気にすんなって。じゃあ田中くんに話してくるか」

「だなっ!」


ついに来た!

どんなリアクションしてくれるかな!?


「………あのさ、田中くん。田中くんって修学旅行嫌いだって言ってたよな?」

高橋が話を切り出した。

「それでさ、野田に聞いたんだよ。田中くんが修学旅行嫌いな理由を…」


いよいよ言うか!?


「そんなこと言ってたね〜、理由つってもたいしたことないでしょ?だってただスガさんへの嫌がらせだもんねっ」


言った!田中くんが。


「余計なことかもしれないけどコレ………って……………え?」

田中くんはニコニコして高橋を見てる。何で高橋が驚いてるのかわかってないみたいだ。

「………え?」

次に高橋は俺に向かって疑問を投げ掛けて来た。

「スマンねっ」

俺は正直に謝った。


「全部嘘です。田中くんはちゃんとお父さんいます。修学旅行も行きます。みんな同様楽しみにしてます。ごめんなさい。全部嘘です。大事なことなので二回言いました」

俺は正直にバラした。


「マジか?」

「マジですっ!」

やべぇ、おもしれぇ。


「俺の一ヶ月は無駄だったのか…?」

一瞬で老けたな高橋。

「無駄じゃないさ、修学旅行先でパーっと使おうじゃないか!めちゃくちゃうまいもん食おうじゃないか!」

「十五万だぞ?十五万も稼いだんだぞ?」

マジか!?

凄いな高橋!

「いいじゃんいいじゃん!贅沢に使おうぜ!」

やっべぇ!修学旅行超楽しみになってきた!

イエーイ!



「いいかげんにしろよテメェエエエエエエ!どーゆうことだああああああああ!」

キレた。


「正座ぁああああああ!」

「はいぃ!」

怖いぜ。


ごめんね高橋。

でもその金はみんなで使おうなっ。


「ウリィィィィィィ!」

「ひいぃ」

怖いぜ。


「最高の思い出を作ろう!」

「調子のんなあああああ!反省しろやあああああ!」



「早速だか欲しいもんがある!PS3を買ってくれ!」

「何でだ!修学旅行関係ねえだろ!………いい加減にしろやああああああああ!」

「冗談ですって」



てか高橋は人を疑うってことを知らんのか?

面白いからいいけどね。


たぶん十割の人が落ちをわかっただろうな。別にそれでいいんだ!バカバカしければいいんだ!

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