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第71話 卑屈になればいい

久しぶりに部活動書きました。喋ってるだけやけど。泳いでないけど。

「あなたたちだいぶ速く泳げるようになってきたわね」

部活終了後俺、高橋、町田の初心者三人は顧問の土屋先生にそう言われた。


高橋と町田はホントに速くなったと思う。

土屋先生の教えかたがよかったのもある。しかしそれ以上に二人が毎日お互いを競い合っているのが一番の理由だろう。

『ん〜〜、負けた!』

『やった!今日はあんたに勝った!』

『くそッッ昨日より良いタイムだったのに…』

みたいなね。

好敵手を持ててよかったね。

いちいち仲良いな。結婚しろよ。


山崎さんと武さんは種目が違えども速いもの同士、何か連帯感みたいのがあるらしくて二人も頑張ってる。

『私達が水泳部を引っ張って行かなきゃ』

みたいなね。

仲良いなチクショウ。



どうも部長です。

俺は、というと。ダメです。

さすがに始めの頃よりは速くなってんですけどね…

それが………今の俺は………高橋が初めて計ったタイムと同じなんです。

切ねぇよ!

タイムなんて計るまでもねぇよ!

部内でおいてけぼりをくってる感が否めねぇ。

冒頭で

『あなたたち〜』

なんて言ってましたが、そのなかに俺は含まれてないと感じました。もう卑屈だ。



「高橋くんと町田さんも日に日に速くなってるしねっそうなってくると水泳楽しいでしょ!?」

「そうっすね」

「楽しいですっ」

ほら、俺の名前がない。

この土屋先生の言い方だと

『野田は水泳楽しくないだろ?何でまだ続けるの?』

って言ってるように感じる。てか絶対そう思ってる。



「野田くんも………ほらっ、スムーズに息継ぎ出来るようになってきたじゃない!そうなってくると水泳楽しいでしょ!?」

ほら、俺には褒めることがないんだよ。一瞬言葉が詰まったじゃん。

しかも明らかに俺を馬鹿にした発言だよ。




「それでなんだけどね、もうそろそろあなたたちも一つの種目を重点的にやっていこうと思うのよ」


………どうせその

『あなたたち』

に俺は入ってないんだろ?わかってるぜそんなこと。

優しさのつもりか?知らず知らずのうちに相手を傷つけてることだってあるんだ。



「それをくじ引きで決めたいと思います!」

マジかい。テキトーだな。

まあ、俺には関係ないけど。


「町田さんと高橋くんは同じ種目がいいわね。どちらかが引きなさい」

そう言ってくじの入っているであろう上に丸い穴の開いた箱をだした。

「じゃあ俺が」

「じゃあ私が」

被った。

てか、“同じ種目で”ってとこは突っ込まんのやな。

いちいち仲良いな。


「…………」

「…………」

意見が分かれたことで見つめ合ってる。


「じゃあやっぱ俺が!」

「じゃあやっぱ私が!」

こいつら譲り合う気持ちねえよ。

いちいち仲良いな!



「………じゃあ先に野田くん引いてっ」


え?

「俺もですか!?」

「何言ってるのよ。当たり前じゃない!」

おぉ、俺は勘違いしてたよ。

卑屈になるって厄介だな。


………バタフライは嫌だ。言っちゃ悪いが、一番イカレた泳ぎ方じゃん。ありえん泳ぎ方じゃん。

あれが生まれたきっかけを是非知りたい。何であんなふうに泳ごうと思ったのだろうか?

最初に泳いだ奴はきっとヤバイ奴だったんだよ。


バタフライは嫌だ!

全国のバタフライ選手?そんなもん知らん!失礼だとか知らん!




………バタフライ引きましたけど何か?

定番だよね。


「バタフライて!もう一回やらしてください!」

「ダメです」

「いいじゃないですか!」

「ダメです!」


マジかよ。



高橋達は町田がクロールを引きました。

『クロール』

なんてスポーティーでスマートな響きなんだ。


「バタフライに変な偏見持ちすぎだから!」

高橋にそう言われたが………お前はバタフライだからそう言えるんだ。



……………

「バタフライになったらしーねー」

山崎さんと帰宅中。

「うん〜」

「私と一緒だねっ」

そうなんだ。山崎さんもバタフライだってことはわかっている。

違うんだ。山崎さんは速いからいいんだ。しかもカワイイんだ。だからいいんだ。

俺は?

俺×バタフライは明らかに似合わないだろ。


「う〜〜〜ん。うれしいねっ!一緒に頑張ろッッ!」

「うん!」

頑張るに決まってんだろ!調子に乗るな!

バタフライ最高だろが!


「何でもアドバイスするから何でも聞いてよねっ」



あんまり結果には繋がらなさそうだからあまり聞かないよ。

呆れられると嫌だからな!

宿題しなくちゃ………なんで春休みに宿題出すんだよ!学校は馬鹿かよ!大人は馬鹿かよ!………さて、からくりサーカス読み直そうかな。

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