第69話 素晴らしき妄想家
そういや二日風呂入ってないや………
「ちょっと聞いてほしいことがある!
嘘なんだけどさ!
俺、年上の彼女ができたんだ。たしか大学二年生だから三歳年上かな。
一週間前の土曜日、なんか兄貴が帰って来るなりいきなり
『急に合コンのメンバーが足りなくなった!お前来い!』
って言うんだわ。そんで俺は絶対イヤだったって言ったのよ。俺なんかが行っても場違いなだけだからな。
でも結局行く羽目になったんだよ。マジ無理矢理、兄貴マジ必死なんだわ。
会場に着いたらもう皆来てるのよ。兄貴が必死になるのもわからんでもない、美人ぞろいなんだよ。聞けば有名お嬢様大学の皆様だとか。
兄貴のメンバーは見るからに三流大学のアホって感じのばっかでよ
『釣りあわねーって、よくこんなお姉さん方と合コンまで取り付けれたな〜それだけで十分だろ。これ以上なにも望むな』
なんて思わず言いそうになったよ。
そんで俺、案の定場違いですよ。
兄貴からは
『兄弟だってことは黙ってろ。俺とお前は今から同級生だ』
なんて言われたんすけど無理ですよ。
外見でばれることはないんですけどね、だって兄貴デブだもん。似てねーんす。
でも問題は酒だよ。みんなアルコール飲んでる中で俺だけジンジャーエールだよ。俺はまだ未成年だっての。
見た目だけでもせめて酒っぽく。って正直あんまり好きじゃないジンジャー飲んでたんだけどやっぱ違和感バリバリですよ。
そのうちお姉さん方から
『何で君だけジュース飲んでるのー』
ついに突っ込まれたよ。
『俺あんまり酒強くないんだよね』
『なにそれ〜ノリ超悪いよ〜』
何だこの女?顔が良いからって調子こきやがって。
兄貴達も目で訴えてくる
『空気読めや』
って。
飲んだよビール。ゴクゴク飲んでやったよ。
『きゃー、ナイス飲みっぷりっ』
うっせえよ女。お前なんかお嬢様じゃねえ。
その後、俺が酒を飲んだことに満足したのかアノ女は俺に絡んで来なくなったんだけど、慣れない酒と空気の悪い店内で気分が悪くなっちまったんだよ。
そんな俺を気にも止めず、兄貴達は楽しくやってんだよ。俺は俯いちゃってるっていうのによ。
『大丈夫、マサル君?』
声をかけてくれたお姉さんがいたんだよ。
『大丈夫じゃないです』
そのお姉さんは俺を外に連れ出してくれたんだわ。
介抱してもらって幾分か気分が良くなった後、店に戻らず俺と一緒に外で喋ってたんだけど端から見れば兄弟みたいだったろうな。
それに俺が未成年だってことはばれてたよ。
帰りに介抱してもらったお礼がしたいってことで後日約束をしたのよ。
ぶっちゃけ多少の下心はあったんだけどね。
そんでその日は昨日だったんだけど
『今日は楽しかったよっありがとね』
『いえ、俺も楽しかったっす。また会いましょう!』
俺はその時、積極的だったな。
『イヤ』
『え?』
『次、会う時はその………彼氏彼女の関係で会いたいなっ…』
『はい!』
そんなことが昨日あったんだ。どうだ?うらやましいだろ?」
「「「嘘なんだろ?」」」
「うん」
クラスの皆から突っ込まれた。
「まず野田って兄いないじゃん」
「やべぇ、俺もこんな出会い欲しいぜ!母ちゃんに兄貴作ってもらおう」
「お姉さんの名前は決めてないのか?」
「なんかお姉さんカワイイなあ〜」
「続編希望!」
なかなかの反応じゃあないか。満足。
「………濡れ場は?」
せっかく爽やかな恋愛話考えたのにそんなの聞くなよ加藤!ねーよ!
「山崎さんという彼女がいるにもかかわらずそんな妄想が出来る野田が怖い」
そんなこと言うなよ高橋………
俺もそう思う。
ちょくちょく年上彼女の話の続きを書くかもしれません。もしくは他の妄想家の話を…