第66話 ラブレターの効果
さすがに放置って訳にはいかないので書きました。
「あ〜〜〜でも、俺にもやっと春が来たんだな〜。まっでも今は夏ですけどねっ」
やっべ。俺浮かれてるよ。
何、一人で変なこと言ってんだろっ。
どうも、高橋です。
実は今朝ラブレター貰いまして、といっても下駄箱に入ってたんですけどね。
というわけで今からラブレターの送り主にに会いに行く次第でございます。
いや、“愛に行く”と行った方がニュアンス的には合ってるしロマンチックじゃなかろうか?
よっし愛に行こう!
………あぁ、この角を曲がれば体育館裏だ。
ラブレターの女の子はもう来てるだろう。
てか、いてもらわないと困る。
告白受ける側の俺が告る側を待つ形なんて絶対嫌だ。そんなの俺が期待しまくりでワクワクしてるやつみたいで超格好悪いじゃん。
そのために帰りのホームルーム後、30分ほど図書館に行ってから来たんです。
だから来てるはず!
俺が来るのをドキドキしながら待ってるはず!
自分の告白が成功するのか不安になりながら待ってるはず!
告白のセリフを小声で復唱しながら待ってるはず!
そんな純朴そうで華奢なかわいらしい後輩が待ってるはず!
ラブレター読んだ感じと俺の理想から“後輩”というジャンルが来てるはず!
もしくは“後輩属性”ってのが来てるはず!
てか、そうであれ!
乳は無くていいから俺の理想よ来い!
そんで、内気で恥ずかしがり屋さんの彼女が心配で物陰に隠れて様子を伺ってる友達がいるんだろうな。
そんで、いざ告白って所でモジモジしてなかなか告白できない彼女がじれったくなって物陰から飛び出てくるんだろうな。
『何やってんのよ△△!』
『あっ!〇〇ちゃん何でここにいるの!?』
『△△が心配で見に来たのよ。そしたら案の定何も言えてないじゃない!』
『あ、ありがとう。ごめんね』
『アンタは謝ってないでこの人に言いたいことをいいなさい!』
なんていう会話があったりするんだろな。
よっし角を曲がろう!
そして俺は足を踏み出した。
………長い人がいる。
てか長い人しかいねえ。
は?
「なんで町田がここにいるの!?」
「え?高橋!?」
「今から俺、カワイイ後輩から愛の告白受けるところなんだけど」
「は?そんな後輩なんて来てないよ」
………たしかに町田以外誰もいない。華奢な後輩はもちろん、その友達が物陰に隠れてることもない。
どーゆーことだ?
「俺、今朝こんなの貰ったんだけどさ」
そう言って俺はラブレターを町田の目の前に出した。
「これ書いたの町田?」
………何言ってんだよ俺!
そんなわけねーだろ!
恥ずかしい!
あれ?
俺、町田のこと好きかもしんない。めちゃくちゃ好きかもしんない。
今やっと気付いたっぽい。
これの送り主が町田だったら死ぬほど嬉しい俺がいる。
スゲェ!
てか町田なんだな!
町田も俺のことが………なんだな!
だってこの場所で待ってたの町田だけだもん!
スゲェ!
「町田なんだな?」
「え?何が?」
やば、絶対顔赤い。汗が半端無い。
「………俺も町田が好きです!」
何だよこれ。ラブレター貰った側が告るってなんだよ。
「ラブレターの事とかはわからんけど私も高橋が好きです!」
おぉ、告白成功。
でも、あれ?
「ラブレターの事とかは知らないって?」
どーゆーことだ?
「ラブレターなんて私出してないよ。そんなもん私が出すと思う?」
たしかに町田は出さなさそう。
「えぇ!じゃあ誰!?」
「さあ?いたずらじゃない?」
「マジかよー、高校生にもなってこんなしょーもないいたずらすんなよ!」
「高橋も高校生にもなってこんなしょーもないいたずらにひっかかるなよっ」
言うねぇ町田。
「………犯人は野田君だと思う。ここに行くように言ってきたの香織だもん」
「野田か!」
朝のリアクションの薄さはこーゆー訳か。
「粋な計らいしやがって!」
「ホントにねぇ」
ムカつくけど感謝しなきゃな。
「町田、顔真っ赤………」「高橋こそ………」
「「………」」
………………
ていうのを期待してたんだけどね、やっぱ高橋じゃあ無理でした。
まあ、わかってたんですけどね。
どうも野田です。
それにしても酷いのは高橋。
町田がいるとわかった瞬間にラブレターの送り主が俺だってことを気付きやがった。
何だよその高すぎる洞察力・状況判断力は!
そんなの持ってるんだったら町田の恋心にも気付けや!
無駄過ぎるんだよ!
町田が不憫でならねぇ!
まあ、いいけど。